吸引分娩児に於ける新生児重症黄痘について
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概要
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吸引分娩の普及につれその有効性と安全性について多くの報告が行われ, その産科臨床上の位置がほぼ決定されて来つつある. しかしながら一方吸引分娩で娩出された新生児にやや重症黄桓が多いのではないかという臆測も行なわれている. その様な意味でまず, 国立福山病院で過去3年間に娩出された新生児1,500例について, その分娩様式別の新生児重症黄痘の頻度を調査した. その結果, 経腟自然分娩では1,232例中21例(1.7%)に於て新生児の所謂「生理的」黄痕が重症化したにすぎないが, 一方吸引分娩児の143例中9例(6.3%)に重症黄痕がみられ, 統計学的に有意の差で吸引分娩児に臨床上重症黄疸が多い事を見出した. そのため昭和39年に1月より同院で娩出された新生児320例について, その足踏穿刺血によりEvelyn-Ma-lloyのHsia変法によつて血清ビリルビン濃度の経日的変化を測定し, 各々分娩様式別に最高血清ビリルビン濃度の比較を行つた. その結果経腟自然分娩児201例中血清ビリルビン値が15.1mg/dlをこえたものが33例(16.4%)あるのに比べ, 吸引分娩児88例に於では25例(28.4%)が15.1mg/dlをこえ, 統計学的に有意の差を以て吸引分娩児に過ビリルビン血症の頻度が高い事を見出した. 次に吸引分娩児について, 臨床上明らかに頭血腫を認めた22例に於ては最高血清ビリルビン値が15.1mg/dlをこえたものが10例(45.4%)もある事から, 吸引分娩児にみられる過ビリルビン血症がこれら吸引分娩児に頻発する頭血腫にその原因の一端を求める事が出来るのではないかと推測した. 又吸引分娩をその産科的適応別に分けてみると, 「予防的」適応で用いた例よりも切迫仮死や麻酔分娩のために吸引分娩を用いた例に過ビリルビン血症が多い事がみとめられた. 最後に出生1分後のアプガー示数が6点以下の新生児に於てアプガー示数9〜10点の新生児と比較して過ビリルビン血症の頻度が高い事から, 新生児仮死に於てアノキシアによる新生児血球の溶血性の増加, 血管の損傷, 代謝異常による肝障害等といつた原因がこれら新生児の過ビリルビン血症の原因となりうるのでないかとも考えた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-11-01
著者
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