妊婦における血液希釈ならびに貧血と胎児の発育

概要

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当科で単胎児を満期に生産した正常妊婦(鉄欠乏性貧血妊婦を含む)350例について妊娠28〜32週および36〜37週の時期にHt,Hb値,平均赤血球容積(MCV)を測定し,血液希釈ならびに貧血と児の出生体重との関係を検索した.妊娠28〜32週においてHt値が28.0〜31.9%と低い値を示す妊婦群の児体重は最も大きく,Ht値が32.0〜35.9%および36.0〜39.9%と高値を示す妊婦群の児体重よりも有意に大きかつた.妊娠36〜37週に於いて検索すると,この傾向は更に著明となり,Ht値が小さい妊婦群ほど児体童は有意に増加した.SFDの発生率はHt値が大きい妊婦群ほど高い傾向が認められたが,推計学的有意差は認められなかつた.Ht値が同じ場合に,鉄欠乏性貧血妊婦と正常妊婦における児体重を比較したが有意差は認められなかつた.Ht値が28.0〜31.9%を示す貧血合併妊婦群の児体重はHt値が36.0〜39.9%を示す貧血を有さない妊婦群の児体重よりも有意に高値を示した.以上により,妊婦において血液が希釈されてHt値が低下することは胎盤の循環状態を良好にし,児の発育を促進させる上で重要であることが判明した.
社団法人日本産科婦人科学会の論文