婦人科領域の血栓好発状態における血液の流動的性状に関する研究

概要

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婦人科領域において血栓が形成されやすい状態として知られている各種の状態における血液の流動的性状の変化を知るため, 血液粘度をずり速度0.989sec^<-1>, 温度37℃の条件のもとで測定した.さらに粘度に最も大きな影響を及ぼす因子であるヘマトクリつト値(Ht)とフィブリノーゲン濃度についても検索した.腹式単純子宮全摘出術をうけた15例の術後1日目の粘度は15.6±3.7cp(平均値±SD)であり, 術前値(12.4±3.7cp)より有意に上昇した(p<0.05).これはHtが39.2±2.8%に, フィブリノーゲンが195.7±71.1mg/dlと有意に増加したためである(術前値はそれぞれ37.4±2.4%, 145.7±40.8mg/dl).術後3日目以後は粘度は術前値に復帰したが, これはフィブリノーゲンの増加に対してHtが低下したためである.径口避妊薬服用者(15例)ではHtは39.6±1.8%と対照群(37.9±1.9%)に比較して有意に上昇したが, フィブリノーゲン濃度に有意差はなく, 粘度は15.1±2.7cpと対照群(13.4±2.8cp)に比較して有意差を示すには到らなかつた.悪性腫瘍末期の患者(子宮癌3例, 卵巣癌5例)の粘度は10.5±2.0cpであり, 対照群に比較して有意に低値を示した(p<0.05).これはHtが29.6±5.7%と対照群に比較して著しく低いためである.しかしHtを同一にして対照群と比較すると, 悪性腫瘍患者では粘度は著しく高値を示した.これは悪性摩瘍患者のフィブリノーゲン濃度が383.5±73.4mg/dlと対照群の値(164.3±33.0mg/dl)に比較して有意に上昇しており, 赤血球の集合性が増加しているためである.以上により, これらの各種の状態の患者では血液の流動性はかろうじて一定に保たれているものの, 脱水や感染などの条件が負荷されると血液粘度は増加し, 血栓形成の素地がもたらされることが示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1981-08-01

婦人科領域の血栓好発状態における血液の流動的性状に関する研究

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