正常妊娠,産褥における赤血球変形能とATP

概要

論文の詳細を見る
正常妊娠、産褥時における、赤血球変形能を知るために、正常非妊婦、正常妊婦、褥婦の赤血球を、それぞれplasmaとbufferに、suspendして、ヘマトクリット45%とし、filtration法によつて測定を行つた。また赤血球変形能に影響を及ぼす因子のひとつである、赤血球内adenosine triphosphate(ATP)も測定し、以下の結果を得た。1)赤血球変形能は、正常妊娠16〜27週、28735週、36〜41週の群で、非妊婦群に比して有意に低値を示した。2)bufferにsuspendした赤血球変形能は、妊娠中期に比して、妊娠36〜41週の群で増加した。3)産褥0〜1日の赤血球変形能は、妊娠、産褥、全期間を通じて最も低く、妊娠36〜41週の群に比して、有意に低値であつた。4)赤血球内ATP値は、妊娠16〜27週、28〜35週、36〜41週の群で、非妊婦群に比して有意に低値を示した。5)産褥0〜1日の赤血球内ATP値は、妊娠36〜41週の群に比して、有意に低値であつた。以上により、妊娠、産褥時には、赤血球変形能が低下することが判明した、またこの低下には、赤血球内ATPの減少が関与していることが、示唆された。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1984-11-01