高プロラクチン血症を伴う妊婦の視野異常および脳神経症状の発現に関する検討

概要

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高プロラクチン(Prl.)血症の大半の症例には程度の差はあれ下垂体腫瘍が存在しており,また機能性高Prl.血症の中にも検査で発見しえない下垂体腫瘍が存在する可能性がある.このため高Prl.血症性不妊患者に妊娠が成立した場合には,妊娠中の内分泌環境の変化による下垂体腫瘍の増大ならびにそれによりひきおこされる臨床症状の発現に十分注意しておかなければならない.今回,妊娠経過中に下垂体腫瘍増大のためと思われる症状が出現した症例の臨床経過を分析し,本症の問題点について検討した.23例の高Pr1.血症性不妊患者に妊娠が成立したが,その内訳はmacroadenoma4例,microadenoma10例,機能性と思われる高Pr1.血症9例であった.これらの妊娠の転帰をみると,18例で生児を得ており,自然流産1例,子宮外妊娠1例,目下妊娠継続中のもの3例であるが,その妊娠経過中に5例で視野障害を,1例で頭痛の発症,増悪をみた.この6例はHardy氏手術々後の1例を含めていずれも妊娠前に下垂体腫瘍が認められていたが,視野障害を生じた5例の中の1例は同時に網膜色素変性症を伴っていたため今回の検討からは除外した.視野障害は妊娠中期以降に出現しており,その内容は視野の耳側欠損と中心isopter沈下が主なものであったが,1例では耳側欠損と同時に鼻側欠損が生じていた.また頭痛は妊娠16週より出現,妊娠後期に強度となり,bromocriptine 1.25mgの服用で軽快をみた.これらの視野障害および頭痛は分娩終了後軽快あるいは消失したが,この中の2例は下垂体腫瘍増大のために分娩終了後にHardy氏手術の適応となった.この2例の妊娠中の血中Pr1.値はその他の高Prl.血症妊娠例の値よりも一般に高値である傾向がみられた.本研究の知見によれば,詳細かつ連続的なfollow upにより,従来の報告に比して下垂体腫瘍の増大に起因する症状の発現率は約28%と高いが,治療前の検査成績からはこれら症状の発現や進行の程度を予知しえないことから,軽微な症状の変化をも早期に発見し厳密に観察することが本症患者の妊娠を管理するうえで不可欠であると考えられた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1983-05-01

高プロラクチン血症を伴う妊婦の視野異常および脳神経症状の発現に関する検討

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