知床を対象とした生態系管理としてのシカ管理の試み
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概要
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最近数10年間におけるシカ個体群の増加は,農林業被害の激化をもたらしただけではなく,シカの摂食による自然植生および生態系の大きな変化を各地で引き起こしている.自然環境の保全を重要な目的とする自然公園や自然環境保全地域では,この問題に対してどのような考え方に基づいて対応するかが大きな課題となっている.知床半島のエゾシカは一時絶滅状態になったが1970年代に再分布し,1980年代半ばから急増して,森林と草原の自然植生に大きな影響を与え続けている.知床半島のシカは冬季の気象条件と餌によって個体数が制限されているとはいえ,メスの生存率は高く,かつ自然増加率が高いために高密度で維特されている.メスも大量に死亡するような豪雪でも来ない限り激減することはない.そのため,自然に放置した場合には,植生への影響は軽減されないだろう.知床におけるエゾシカの爆発的増加が,自熱生態的過程か人為的な影響による要因かを区分することは,現状ではできない.管理計画策定にあたって重要なのは,半島全体の土地利用と自然保全の状況に応じて地域ごとの管理目標を明確にし,総合的な計画を策定することである.また,モニタリング項目として絶滅リスク評価につなげられるような「植物群落の分布調査」が不可欠である.知床国立公園内や周辺地域での生息地復元や強度な個体数管理などを実施する場合は,生態系管理としての実験として位置づけ,シカと植生の双方について長期のモニタリングを伴う順応的な手法を採用していく必要がある.
- 2004-12-25
著者
-
常田 邦彦
財団法人自然環境研究センター
-
岡田 秀明
知床財団
-
梶 光一
北海道環境科学研究センター
-
佐藤 謙
北海学園大学教養部
-
佐藤 謙
北海学園大学工学部
-
石川 幸男
専修大学北海道短期大学造園林学科
-
宮木 雅美
北海道環境科学研究センター
-
常田 邦彦
自然環境研究センター
-
鳥居 敏男
環境省東北海道地区自然保護事務所
-
小平 真佐夫
知床財団
-
KAJI KOICHI
Hokkaido Institute of Environmental Sciences
-
Kaji K
Hokkaido Inst. Environmental Sci. Sapporo Jpn
-
Kaji Koichi
Tokyo Univ. Agriculture And Technol. Fuchu Jpn
-
Kaji Koichi
Nature Conservation Division Hokkaido Institute Of Environmental Sciences
-
佐藤 謙
北海学園大
-
梶 光一
東京農工大学農学部野生動物保護学研究室
-
梶 光一
東京農工大学大学院共生科学技術研究院
-
石川 幸男
専修大学北海道短期大学みどりの総合科学科
-
石川 幸男
専修大学北海道短大
-
梶 光一
北海道環境科学研究センター自然環境保全科
-
Kaji Koichi
Hokkaido Inst. Of Environmental Sciences
-
石川 幸男
専修大学北海道短期大学
-
小平 真佐夫
財団法人知床財団
-
MIYAKI Masami
Hokkaido Institute of Environmental Sciences
-
宮木 雅美
酪農学園大学
-
宮木 雅美
酪農学園大学環境システム学部地域環境学科地域環境保全学研究室
-
常田 邦彦
東京農工大学農学部自然保護学講座
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