Glycine 属における DNA 量の変異
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概要
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ダイズの成立過程におけるDNA量の変化を明らかにする目的で,Glycine属数種のDNA量を測定した。測定は主に根端のFeulgen染色による顕微分光測光法によった。また数系統についてOgur-Rosen法によりDNAを抽出・定量し,顕微分光測光法による結果を確かめた。各種ともにDNA量の種内変異は大きく,染色体内のDNA量はある程度変化し得ることが明らかになった。またダイズの細胞当たりDNA量は平均4.29pgであり,野生祖先種とされるツルマメ(G.soja)の4.80pgより有意に少ない。従って,ダイズが成立する過程でDNA量が減少したと考えられる。この野生祖先種から栽培種への減少傾向はイネでも見られており,栽培化とDNA量の変化とは密接に関連しているであろう。ダイズとツルマメの間でDNA量の変異域は互いに重なり合っており,DNA量が減少した場合だけでなく,逆に増加した場合もあったであろう。しかし,基本的にはDNA量の減少を通じてダイズが成立してきたと考えられる。すなわち,DNAの減少により遺伝子の欠落・再配列等が生じ,新たな変異が生み出されてきたのではなかろうか。 つぎに,ツルマメと近縁野生種であるG.tabacina,G.tomentella,G.clandestina,G.canescensとの比較を行った。G.tabacinaとG.tomentellaには2倍体(2n=40)と4倍体(2n=80)が含まれているため,染色体当りDNA量で比較すると,ツルマメのDNA量が最も多かった。G.tabacinaを除く近縁野生種の供試系統数は少ないが,おそらくDNA量の多い野生種が作物へと進化し得たのではたかろうか。DNA量が多いことによって,その欠落・再配列に耐え,新たな変異を生み出したものと考えられる。
- 1984-06-01
著者
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