イネ胚生長の時系列解析 : 生長率の周期的変化
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概要
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植物においては,、形態形成の基本的な型が胚発生に集約されているので,植物体にみられる形態的変異の多くは,胚発生における変異に基づくと考えられる。したがって胚発生についての詳細な研究によって,形態形成の基本的葯機構が明らかにされるだけでなく,さまざまな変異の成因についても多くの基本的た知見が得られるものと考えられる。このような考えのもとで,イネの胚発生に関する研究を進めるため,水稲品種日本晴を供試して,胚の生長についての詳細な解析を行った。1974年8月29日午前11時30分から12時までに開花した穎花を,開花後2日目の午前零時から8日目の午前10時30分まで1時間半ごとに5個体以上の植物体からランダムに10個ずつ採取した。その後パラフィン切片を作製し,胚長,胚厚を測定した。各時刻7〜10個の胚の平均値をもってその時刻の胚長・胚厚とした。まず各時刻における胚長・胚厚の(相対)生長率を求めたところ,周期的な変化が観察された。そこで,時系列解析を行なうために,移動平均からの残差を求めることによって,生長率の平均値に関する定常化を行なった。この定常化された生長率を用いてコレログラム解析を行なった。コレログラムもある種の周期性を示したので,その周期を求めるためにペリオドグラム解析を行なった。ここでは,コレログラムとCOS関数との相関係数によるペリオドグラム解析を行なった。その結果,胚長・胚厚ともに,約5.15時間と約5.68時間に著しい有意なピークが見られた。従って,胚長・胚厚の生長率は,ともに二つのCOS関数の和として表わすことができる。また胚長と胚厚のCOS関数の位相のずれもわずかであった。従って,胚の生長率には二つのリズムが存在する。
- 日本育種学会の論文
- 1976-06-01
著者
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