イネ胚生長の安定性について
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概要
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イネ(品種目本晴)を用いて生育温度の変動に対する竿の年長反応を調べた。変温:30〜25℃,25〜20℃及び定温:20℃の三つの温度条件下で生育させた場合,胚の生長速度は高温になる程大きくなった。Lかし,指数生長開始時の細胞数及び細胞増加率の転換時の細胞数は温度条件にかかわらず一定である。従って,上記のような生長様式の転換は生育温度と無関係に決定されていると考えられる。胚の形の変異を,胚長と胚厚の相対生長係数及び胚厚/胚長値に基づいて調べたところ,低温になるに従って胚の形の変異は大きくなった。特に球状胚段階での変異が大きくなり,この段階は生育温度の変動に対して不安定な時期であると考えられる。次に,30〜25℃で生育させ,球状胚中期・後期及び第2葉分化後にそれぞれ24時間の20℃温度パルスを与え,どの時期が不安定であるかを調べた。いずれの時期に温度パルスを与えても,胚の生長はパルス後直ちに約12時間の遅延を示した。しかし,生長の遅延からの回復はいずれの場合にも成熟後期の開花後12日目頃(胚長約1700μm)であって,初期にパルスを与えても生長の遅延からの回復は早くならない。このことは,低温パルスが生長の時間的遅れをもたらすだけであり,生長曲線のパターン自体は変化せず安定なものであることを示している。また,相対生長係数及び胚厚/胚長値に基づいて胚の形の変異を調べると・球状胚中期及び後期での低温パルスによってパルス後の胚の形の変異は大きくなった。一方,第2葉分化後に低温パルスを与えた場合には,胚の形の変異は無処理区のものとほとんど変らなかった。従って,球状胚段階,特にその後期,は不安定な時期であるが,形態的分化後の胚は安定なものとなる。
- 日本育種学会の論文
- 1979-03-01
著者
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