インゲンマメ種子に含まれるアズキゾウムシ生育阻害物質の同定
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概要
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アズキゾウムシはアズキ、リョクトウ、ササゲ種子を食害する貯蔵害虫であり、我が国においてはアズキ貯蔵中の最大の害虫である。栽培アズキには本虫に対する低抗性は見出されていない。アズキゾウムシは、寄主としていないダイズ、ソラマメにおいても生育が可能であるが、インゲンでは生育できない。また、インゲン種子中には本虫に対して生育阻害活性を有する水溶性物質があることが明らかにされている(ISHII、1952)。そこで、インゲン種子に含まれる水溶性の生育阻害物質の単離・同定を試みた。インゲン種子粉の0.02M燐酸緩衝液(pH6.7)抽出物を分画し、水に対して透析後、凍結乾燥し、種々の割合でアズキ粉に混合した人工豆を作り、どの画分に生育阻害物質が濃縮されるかを調べ、純化を進めた。燐酸緩衝液により抽出された生育阻害物質は、20〜60%飽和の硫安沈澱画分に濃縮され、プロテアーゼに感受性であった。さらに、生育阻害物質はCon A-Sepharoseに吸着し、Sephacryl S-200によるゲルロ過でレクチン(分子量約12,600)とほぼ同じ位置に溶出した。生育阻害物質は、Con A-Sepharsoeに吸着後、DEAE-Sephacelによるイオン交換クロマト(0.02〜0.25M燐酸緩衝液(PH6.7))で、レクチンの後に溶出した(Fig.1)、単離された生育阻害物質は、強いα-アミラーゼ阻害活性を有するα-アミラーゼインヒビターであり、インゲン種子中の濃度(0.4〜0.5%)でアズキ粉に混入することによりアズキゾウムシの生育を完全に阻害した。さらに高度に精製したα-アミラーゼインヒビターは、native PAGEにより単一の泳動バンドを与え、SDS-PAGEにより3〜4本のバンドを与えた(Fig.2)。以上の結果から、インゲン種子中に含まれる水溶性のアズキゾウムシ生育阻害物質は、分子量10万程度の糖蛋白質であるα-アミラーゼインヒビターである。
- 日本育種学会の論文
- 1988-09-01
著者
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