東南アジアと西部北太平洋における夏のモンスーンの共通点と相違点
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概要
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夏の東南アジアモンスーン(SEAM)および西部北太平洋モンスーン(WNPM)の発達・衰弱過程を、半旬平均のOLR・850hPa面の風・鉛直積分した水蒸気フラックスベクトルおよびそれによる水蒸気収支によって調べた。SEAMはアジア大陸上の地面加熱による巨大な熱的低気圧の発達にともなって7月下旬に最盛期を迎える。一方WNPMの最盛期は、これに比べて2〜3週間遅れる。これはWNPM域内部での加熱ではなく、アジア大陸の熱的低気圧からの影響により、モンスーントラフの強化が遅れて起るためである。SEAMを維持する水蒸気は、主にアラビア海およびさらに風上地域のインド洋から輸送されてくる。他方WNPMでは、主要な水蒸気供給は、東太平洋からの東風によっており、SEAM領域からの水蒸気の流入は二義的である。ついで、半旬平均データを赤道対称成分と非対称成分とに分離した。SEAMでは非対称成分が卓越しており、SEAMは赤道をはさんだ南北の熱的コントラストによってもたらされる、赤道非対称なモンスーンである。SEAMにおける水蒸気収支に対する非対称成分の貢献度は82%に達するが、対称成分の貢献は18%にすぎない。これに対しWNPMでは、赤道対称成分が非対称成分に匹敵しており、WNPMは赤道に対して非対称と対称な成分が、混合してできたハイブリッドモンスーンシステムである。WNPMにおける水蒸気収支に対する両成分の貢献もほぼ匹敵しており、対称成分が58%に、非対称成分が42%である。赤道対称成分は、赤道付近での気候学的なウォーカー循環の維持に寄与している。赤道非対称なハドレー循環は、ウォーカー循環の上昇域にあたる赤道インド洋東部の対流活動に水蒸気を供給する。こうして活発になった対流活動によって、インド洋では西風、西太平洋では東風となり、赤道に沿った赤道対称なウォーカー循環が強化される。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1999-08-25
著者
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