中国市場での競争戦略と人的資源管理施策とのアラインメント : 日系製造企業5社の事例から

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近年、企業の人的資源管理(HRM)と業績との関係を調整する重要な変数として、企業レベルでの事業戦略の存在が注目されつつある。いわゆる戦略的人的資源管理(SHRM)の枠組みでは、企業が競争優位を確立・維持するためには、個別の人的資源管理施策(ベスト・プラクティス)の有効性や効率性の追及のみならず、採用・選抜、配置、報酬、能力開発といった人的資源管理の諸機能を、いかに企業の「競争戦略」に適合(fit)させ、全社的な経営戦略を展開していくかが極めて重要である点が指摘されている。とりわけ、2001年に実現した中国の世界貿易機関(WTO)加盟の前後を境に、参入当初に数多く見られた低廉な資源や労働力活用を主要な投資目的とし、日本向け製品の製造事業に特化する「輸出加工型」の事業戦略から、巨大な中国市場での成功を目指す「市場志向型」の戦略へと修正・転換させつつある。こうした経緯から、多くの日系企業において中国市場での競争戦略と人的資源管理施策の最適化の追及は、中国事業での成功の鍵となる主要な規定因の1つとして、近年実務家及び研究者双方の間で注目の度を高めつつある。こうした見解を踏まえ、本研究では、中国での市場競争の激化が進展する中、中国に進出する日系製造企業が、(1)いかなる経営戦略のもとに中国市場での競争優位確立を志向しているか、(2)こうした各企業の市場環境への適応行動に適合する形で、企業が人的資源管理の諸施策をどのように実施しているかについて、日系製造企業5社の事例を通じこれらの実態を明らかにすることを目的とした。在中国日系各社のトップマネジメントとのインタビュー調査から、各社の中国での戦略は、(1)コスト削減戦略、(2)製品差別化戦略、及び(3)高品質化戦略の3つのタイプに分類されることが明らかとなった。さらに、人事担当者とのインタビューの結果、各社が追求する特定の戦略に適合する形の採用、評価、報酬、能力開発などのHRM施策が実施されていることが明らかとなった。以上の事例調査結果を踏まえ本研究では、中国市場で追求される特定の戦略とHRM施策の適合に関する仮説的な関係が提起されたとともに、今後の研究の方向性や本研究の制約などが議論された。
2004-09-30

中国市場での競争戦略と人的資源管理施策とのアラインメント : 日系製造企業5社の事例から

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