チャヤノフ小農経済理論の検討
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概要
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スリランカの人口の74%は農村住民であり,そのほとんどは,家族農業かプランテーション農業に従事している。スリランカ農業は,労働集約産業であり,専ら農村の労働力に依存して農産物その他の生産を行っている。農村労働力は基本的に家族労働力(家族農業)と農村労働力市場の雇用労働力(プランテーション農業)の2種類からなっている。この農業の発展は,スリランカ経済発展の主要な構成部分であるため,小農経済理論の研究が必要である。小論は,ロシアの経済学者チャヤノフによって展開された「小農経済の原理」を取り上げ,その理論的特徴を検討した。チャヤノフの小農経済理論は,農業部門では労働市場が存在しないものと仮定し,それ故,農家はもっぱら家族労働に依存していると仮定し,この労働市場の欠如が,家族労働の次の二つの区別を既定していることに基づいて展開されている。すなわち(1)農場の仕事,(2)農場の仕事以外である。これらのニつの区別は相互に排除しあうが,「農場の仕事」は消費需要を充たす所得を得る労働であり,生活時間を含む。「農場の仕事以外」は「農場の仕事」よりも家族はよりバラバラの行動を取ることを意味している。家族の行動に影響を与える主要な要因は,家族の人口論的な構造である。この要因は,c/w ratioと呼ばれる家族の働き手たちに対する消費員数の割合に要約され,図解されている。この原理を基礎として,小農家族の規模や構造を通して人口論的周期を説明し,また,これに基づいて農業部門では小農経営が優勢であることを根拠づけている。チャヤノフの原理は,賃労働市場の低度の発達を前提し,自家の農業経営で労働の完全燃焼を目指す技術段階まではより純粋に作用する。しかし,賃労働市場が展開し,農業を雇用労働に依存して経営する者や農外の被傭労働によって所得を実現する者が出現するような農村労働力が市場原理で移動する段階になると,原理は撹乱され変異する。生産(労働)と消費(家計)の補完関係,すなわち労働力の再生産が自己完結する閉鎖系のチャヤノフの原理は技術・資本の蓄積を排除した原理であり静態原理である。それ故,現実の動態過程の基礎として作用しながらも,絶えず撹乱されて純粋な形では現象しない。
- 1996-11-28
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