自由な農民的分割地所有の規定的な地代 : 分割地地代の概念
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概要
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本研究は,自営農民の自由な分割地所有において土地生産物の価格に規定的にはいりこむ地代を対象としている。従来の研究では,土地生産物の市場調整的価格には地代は含まれないものと考えられ,他方では,生産物の平均的市場価格を規制する最劣等地にも土地価格があり,この土地価格の基礎である地代の範畴規定をめぐって,様々な論議が行われてきた。本報告は,最劣等地の地代と土地価格の連関の論理的考察を通して,次の結論を提示した。1.最劣等地の地代は,生産物価格の規定的要素として,農民経営によって生産される剰余価値の実現形態であり,平均的市場価格に実現する。この地代を私は「分割地地代」(Parzellenrente)と名付けた。2.他方,土地価格は,農民経営にとっての費用価格の要素を成し,経営の再生産を規制するが,生産物価格の非要素であるが故に,その年々の可除部分が市場価格に実現するという保証はない。土地価格は,先取りされた地代または予想された計算上の地代であるため,分割地地代とは何の関係もない一種の擬制資本であり,地代が変動しなくても,一般利子率の変動によって,さらに土地市場の需給変動および投機によって変動し,地代に比例して変動するとは限らない。3.農民自身の剰余労働による分割地地代の実現は,農民が土地購買(土地価格)で失った貨幣資本の回収として現象するにすぎず,剰余価値の独自な分化形態としては現象しない。分割地地代は,自由な分割地所有の経済的実現形態であり,その実存は,土地生産物の市場調整的価格が日本での通説となっている「費用価格規定」によるのではなく,費用価格プラス分割地地代によって調整されることに帰着する。
- 岐阜大学の論文
- 1988-12-25
著者
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