農産物価格を規制する地代に関する考察
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概要
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日本の農地改革によって創出された「自作農的土地所有」の性質を規定するためには,そこで実現している自作地地代の概念を明らかにすることが基本的課題となる。この自作地地代は,年々支払われている小作料ではなく,自作農的土地所有=自作農民経営を基本的形態として自作地に,及び農産物市場価格に実現している地代である。小論は日本の農産物生産費と農産物価格形成をめぐる従来の論議を考察して自作地地代の二面的性質を明らかにし,農産物生産費の構成要素として自作地に実現される自作地地代と農産物の平均的市場価格を規制する絶対的なる地代としての「自作地地代」(農産物生産費要素としての自作地地代と区別して「 」付きとする)の概念を試論的に提示した。その考察の結果をかいつまんで列記すれば次の通りである。1.地代が生産費の要素であるか否かの依り所の一つは地代の原価性である。現行の原価計算基準によると,自作地地代は非原価項目に計上されて原価計算のらち外におかれ,青色申告の必要経費の項目にも含まれていない。しかし,自作農民にとっては自作地地代は自作地購買価格の年可除部分として先取りされ前払いした地代であり費用要素であり生産費の一要素である。それ故,農産物の生産費及び必要経費に支払地代と同様固定費の一項目として計上すべきである。2.農産物生産費の一要素としての土地価格,すなわち自作地購買価格の年可除部分が類地小作料で評価される現行の農水省による農産物生産費算定方式は測定結果から見れば妥当である。農産物の政策価格はこれを自作地地代として算入し補償しなければならない。3.他方,絶対的なる地代としての「自作地地代」は自作農的生産関係において生産された剰余価値の転化形態として農産物の平均的市場価格を規制し土地純収益として現象する。4.以上のように,自作地地代は二面的に規定され,自作農民経営の農産物生産費においては自作地購買価格の年可除部分として生産費要素であり,農産物価格形成において平均的市場価格を規制する絶対的なる地代=「自作地地代」は「自作農的土地所有」の経済的実現形態であり,自作農民自身の剰余労働二剰余価値の転化形態として農産物価格に実現する。
- 岐阜大学の論文
- 1990-12-25
著者
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