水稲花粉の成熟過程に於ける温湯処理の効果
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概要
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1. 温湯法による集団除精法を種々の作物に適用する際に, 供試花の成熟程度によつて花粉の熱に対する抵抗力に差がある様に思われる。此の点を明らかにする為に, 水稲品種「千本旭」を用いて幼穂並に花粉の成熟過程の観察と, その種々なる時期に於ける温湯処理が, 花粉及び雌蕊の機能に対し如何なる影響を及ぼすかを調査した。2. 処理条件は, 低温区40℃-8分, 標準区43℃-8分, 高温区46℃-8分の3区とし, 処理時期を, 通常処理期, 出穂期, 出穂前3∿5日, 7∿8日, 11∿13日の5期とし, 両者を組合せて15試験区を設けた。3. 出穂期以前の処理により, 供試穂の出穂期に変動を来さしめなかつたので, 出穂前日数の決定は, 処理がその穂の出穂期に先立つ日数を以つてした。4. 花粉の成熟状態は, 出穂前11∿13日では花粉母細胞のMeiosis, 7∿9日では花粉の外殻形成期, 3∿5日は花粉内容の充実期であり, 出穂期以降に於いては花粉粒はすべて完成していた。5. 温湯処理後直ちに袋掛けを行い, 自家結実の状態によつて花粉の機能を調査し, 一方Clipping methodによる結実率によつて雌蕊の機能を調査した。更に結実種子の発芽試験を行い, 之等に対する処理の影響を考察した。6. 花粉の熱に対する抵抗力は, 成熟過程にあるものは一般に強く, 出穂期に於いて著しく弱まり, 開花直前の成熟花粉が最も弱かつた。又出穂期以降に於ける雌蕊の熱に対する抵抗力は, 花粉のそれに比して著しく強いものと思われる。7. 結実種子の発芽は, 最適処理条件区のものが最も良好であつたが, 処理, 時期による差は認められなかつた。8. 以上の結果より, 温湯法により集団除精を行うに際しては, 処理に先つて開花直前の成熟程度均一なる頴花を選び, 未熟花はつとめて摘除する必要のあることが判明した。
- 京都府立大学の論文
- 1956-09-01
著者
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