沖縄における木灰ソバの製造と品質に関する調査研究
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概要
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木灰ソバ作りで最も大切な要素の一つは,アク(灰汁)加減である。本研究は,現在,県内の木灰ソバ店で使われている灰汁の実態を明らかにすることを主目的に,試作木灰汁の濃度変化と,県内の木灰ソバ店から採取した木灰汁の性質の両面から,灰汁のpH値とボーメ比重の比較分析を行なった。試作木灰汁の濃度変化では,灰の一番煎じから三番煎じまでのpH値は,13.67∿11.62の範囲で,灰と水の配合割合の比較では,pH値はそれほど大きな変化は示していない。一方,ボーメ比重は最大4.5から最小0まで,大きく上下変化している。二番煎じと三番煎じになると,0に近い数値になっている。これらのことから,木灰と水の配合割合の変化で影響を受けやすいのは,pH値よりもむしろボーメ比重の値であることが確認できた。各木灰ソバ店で使用されている木灰汁は,pH値,ボーメ比重ともに,大きくバラツキがあった。各ソバ店で使用している木灰汁のpH値は,最大13.50∿最小9.05で,経験的に知られている木灰汁のpH値の最適pH値を12∿13とすると,この範囲に収まらない店が3店舗あった。他方,ボーメ比重は,最大4から最小0までと,さまざまな値を示した。経験的に知られているボーメ比重の最適値を3として,各店の数値を比べると,調査8店の内,2店のみが3と4の比重値で,残りの6店は低い値を示した。ボーメ比重0の店が3店もあった。各木灰ソバ店でのボーメ比重が,全体的に低い値を示しているのは,木灰と水の配分割合,あるいは木灰を煎じる回数の面で,適度な基準を守っていないことに,大きな原因があると考えられる。貴重な木灰を何回も煎じて使うことで,ボーメ比重の値は低下し,その結果,粗悪な灰汁の性質へと変化している,とみられる。実際に,各木灰ソバ店の麺を試食してみても,麺の色や粘弾性の点で良し悪しがあって,木灰ソバ本来の黄色い自然発光の麺で,コリコリした食感が得られないところが多かった。今後,本物の木灰ソバ作りを志向していく上で,一番大切なことは,木灰汁の性質の基準づくりである。そしてそのための質の良い木灰を,どのように調製するのか。また木灰の安定的供給をどのように図るべきか。沖縄の伝統的麺食文化の再生と,その発展を図るための技術的並びに政策的取り組みが,今求められている
- 2001-12-01
著者
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