飼料資源としての有用木本植物の検索とその飼料化に関する基礎的研究 : 第 3 報マングローブ植物の嗜好性に関する研究(附属熱帯農学研究施設)
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概要
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マングローブ植物の飼料化はヒルギダマシの例を除き殆ど見あたらない。それはマングローブ植物の分布が特殊環境下にあるため, 放牧家畜の利用が制限され, また採集して家畜に与えることの困難性が考えられる。筆者らのこれまでの研究では, マングローブ樹葉の栄養価値及び消化率は良質牧草に比べて遜色無いことが明らかにされた^<2)>。しかし飼料価値は栄養含有によって判定するだけではなく, 飼料を家畜が嗜好するか否かを含めて判定しなければならない。本研究では, マングローブ樹種, 熱帯二次林の木本植物, 牧野草を材料として, 山羊による嗜好性の比較を試みた。結果の大要は次の通りである。試験(1)マングローブ植物とアカメガシワとの嗜好性比較 6種のマングローブ植物とアカメガシワを供試して, 山羊4頭を用いて, キャフェテリア法とオミット法により嗜好性を比較した。生葉の場合, 最も嗜好性の高かったのはアカメガシワであった。以下オヒルギ, ヤエヤマヒルギ, メヒルギとつづき, ヒルギモドキ, マヤプシキ, ヒルギダマシの順であった。乾燥葉では嗜好性の変化がみられた。マングローブ樹葉のなかではヤエヤマヒルギの生葉の嗜好性がかなり高く, 乾燥葉でも嗜好性が上昇し, アカメガシワに優り, 将来の飼料資源のひとつとして有望と思われる結果が得られた。試験(2)マングローブ, 牧野草, 木本植物の嗜好性比較 試験(1)で嗜好性の高かったマングローブ植物から3樹種, 2次林の木本植物7樹種, 日常飼料として利用されてるイネ科草2草種の計12の試料を用いてキャフェテリア法による嗜好性の比較を行った。試験の結果は試料の数が増えたため, 選択の幅が広がり, 嗜好性の差が大きくなった。マングローブ植物のなかではヤエヤマヒルギの嗜好性(生葉5位, 乾燥葉2位)が高く, 二次林の木本植物ではシマグワ(生葉1位, 乾燥葉3位)が高かった。熱帯の良質牧草であるギニアグラスの嗜好性は生葉では2位であったが, 乾燥すると著しく低下(8位)した。ヤエヤマヒルギは試験(1)と同様に相対的な嗜好性が高く飼料としての利用の可能性が高いと思われる結果を示した。
- 1994-12-01
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