南西諸島における熱帯イネ科牧草の導入と栽培 (II) : 収量におよぼす施肥窒素の影響(附属熱帯農学研究施設)
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概要
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本試験は南西諸島における熱帯イネ科牧草の代表的な草種である, ギニアグラス, ローズグラスおよびグリーンパニックの3草種を用いて乾物収量に及ぼす施肥窒素の影響を明かにするにために実施された。結果の大要は以下の通りである。1. 乾物収量 3草種の年平均乾物収量を10a当りに換算すると, 0N区280kg, 1N区830kg, 2N区1470kg, 3N区1950kgであった。1N区の収量は0N区の約3倍, 2N区は1N区の約1.8倍で, さらに窒素の供給を増大した3N区は2N区の約1.3倍となり増収の割合はかなり緩やかになった。これらの結果から3N区の窒素水準(74.5kg/10a/年)付近に窒素施用量の最適値の存在が推察される。これは宮城のネピアグラスの限界窒素施用量(60kg/10a/年)より高くなっているが草種及び土壌の違い等を考慮するとほぼ妥当な数値であろう。2. 季節生産性 3草種の10a当りの日平均乾物増加量の推移は, 全処理区とも6月刈り取りが最大であったが, 最小の刈り取り期は0N区は12月, 1N区∿3N区では, 2月刈り取りであった。いずれの窒素水準においても最大生育期は高温の夏期にあり, 逆に最小生育期は低温の冬期であった。3草種平均の最大生育期に対する最小生育期の日乾物増加量の割合を求めると, 0N区∿3N区のいずれも21∿26%の範囲内であった。すなわち南西諸島における牧草の季節生産の変動の大きな要因は温度にあり, 低温の冬期に窒素を多用しても増収はそれほど期待できないことが明らかにされた。3. 施肥窒素1kg当りの乾物生産効率 施肥窒素1kg当りの3草種の平均乾物生産量は, 1N区32kg, 2N区31kg, 3N区27kgであった。施肥の効果は低レベルの窒素を供給した1N区が最大で, 2N区, 3N区, と供給を増大していくと, 逆に施肥窒素1kg当りの乾物生産への貢献は低下した。これを草種別にみると, ギニアグラスは2N区34kgが最大で, 3N区31kg, 1N区29kgの順であった。ローズグラスは1N区36kg, 2N区31kg, 3N区27kg, グリーンパニックは1N区30kg, 2N区28kg, 3N区24kgであった。ローズグラスとグリーンパニックの両草種は1N区の窒素水準で施肥窒素1kg当りの乾物生産にたいする貢献が最大になり, さらに窒素の供給を増大していくと貢献度は低下した。このことから3草種のなかではギニアグラスの窒素に対する反応が大きく, しかも耐肥性の強い草種であると考えられる。
- 琉球大学の論文
- 1990-12-05
著者
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