知的障害児の曲づくりにおける表現発展の道筋 -(第2報)「ころころころ」の絵本から,音楽を作ろうという授業の分析を通して-
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概要
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本研究の目的は, 知的障害児の原初的な形での音楽表現のあり方に注目し, その発展の道筋を明らかにすることである。そのために, 生徒が主体的に音的世界に関わることが出来ると考えられる曲づくりの授業を設定した。しかし, 知的障害児が音だけからのアプローチで創作を発展させることは困難だと予想されたので, ここには作曲家であり, 音楽教育家でもあるカール・オルフの基本概念を生かした授業を構想した。具体的には言葉, 動き, 音という三者による創作表現を導入した。そして, 養護学校高等部に在籍する障害が軽度な生徒に取り組ませた。その結果, 次のことが明かになった。曲づくりが発展するプロセスは, ①人に寄り添って表現する, ②自立して断片的なリズムを開発し, その反復で曲づくりする, ③断片的なリズムをつないで曲づくりするという道筋であった。生徒の中には, ④今ある材料から短いストーリーを創作して, それに基づいて曲を作るというところまで活動を発展させるものもいた。また, 表現が①から④に発展する契機になったこととして次のことがあげられる。①人に寄り添って表現していた生徒も活動しているうちに, ②自立して自分一人でも表現できるようになった。自立は得意なことを軸として, その表現で心身が充分に解放されたり, 「自分にもできた」という成功感や成就感を味わったり, 得意なことで, 表現する一つの手段を獲得したことで促された。 このようにして自立すると, 先ずは断片的なリズムが開発された。それは得意なことを種として作り出されたのである。③断片的なリズムが開発されると, 次にこれらのリズムはつながれた。それは得意な表現における構成力を音の世界に応用するというやり方で行われた。④短いストーり一に基づく曲づくりは, 曲に変化や広がりを求める姿勢から生まれてきた。その話は絵や音という今ある材料を基に作られたのであった。The purpose of this study was to investigate the developmental process through the activity of musical expression in the elementary form. Forth is purpose, Music-Making was practiced. Because it was expected to be difficult that children with intellectual disability create music just with the approach of the sound, the activity on the basic idea of Karl-Orff, the world-famous music educationalist, was intoroduced. That is the expression of speech, movement and sound. And children with intellectual disability began to try those activities. The data was taped, video taped, then transcribed and analyzed. The analysis leads the following. Children, 1.express with their friends, 2.make a fragment rhythm independently, 3.conect a few fragments rhythm into a very simple piece, 4.make music on a simple story. The fragmentary rhythm was made on the basis of anexpression which children were familiar with. A very simple piace was made by organizing the fragments in the expression which they are familiar with. A simple story was made of existed materials (a picture and sound)
- 大阪教育大学の論文
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