わが国におけるオルフの音楽教育の解釈とその実践について : -言葉・動き・音の一体化に焦点をあてて-
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概要
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カール・オルフの教育では,音楽教育の土台を築くことを目的として,創造性の育成や,即興表現や,言葉・動き・音の一体化や,初歩的な段階の指導等が重視されていると言われている。本稿では,オルフのこのような考え方が,わが国でどのように解釈され,実践されているのかを明らかにすることで,知的障害児の音楽教育のあり方を究明する手がかりを得ようとするものである。言葉・動き・音の一体化について,文献からは具体的な解釈は得られなかった。しかし,オルフセミナー「音楽と動きの表現」の実践では,活動の素材として言葉,動き,音の一体化されたものが扱われていた。それは,普段の遊びと言える活動であり,音楽や舞踊や演劇等という領域に分けられる以前の,未文化な状態にある原音楽とでも言えるものであった。また,活動の発展過程における作品には,言葉,動き,音の三者の表現が,どれが主だとか従だとかいうのではなく,同等の価値を持って存在していた。そして,それらは相互に関連し合いながら一つの新しい表現を生み出していた。セミナーではこのような表現が音楽として捉えられていた。また,活動の出発点として,文献では楽器や音楽形式という音楽からの出発しか考えられていなかったが,実践では「身体の発見」や「聞くことの意識化」というような,創造の基礎となる活動が考えられ,ここではイメージを内包した表現が目指されていた。実践における言葉,動き,音の一体化や創造の基礎となる活動の重視という視点は,知的障害児を対象とした音楽教育でも大いに参考になるものである。It is said that Carl Orff music education puts emphasis on fostering of creativity,spontaneous expressions,the relationship among speech,movement and sound,the guidance in an early stage.This study is an investigation into various aspects of music education for children intellectual disability.The main purpose of the study is to clarify how Orff's ideas are interpreted in our country and put into practice.On the relationship among speech,movement and sound,concreate interpretation hasn't been gained from the reference books.But in the practice of Orff's seminar“Expression with music and movement”they dealt with activities in which speech,movement and sound are related.It can be called the activities of ordinary playing or undeveloped core-music before it is divided info the categories of music,dance,and drama.In the process of the activities,speech,movement and sound existed with each equal value and at the same time they form an intimate relationship with each other to give one new expression.In the seminar this new expression was recognized in the form of music.Music activities just begin with musical instruments or the form of music in the reference book.But in the practice they thought much of the activities which form the basis of creativity and with the imagination of each child.The aspests of the relationship of speech,movement and sound and the importance of the activities based on creativity will help very much the music education for children with intellectual disability.
- 大阪教育大学の論文
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