繊維原料の醗酵精練に関する基礎的研究とその工業化(農芸化学部門)

概要

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本文は動物繊維を代表する絹糸紡績原料の発酵精練と, 植物繊維原料を代表する麻類原料の発酵精練について検討したものである。およそ繊維原料の発酵精練の研究に関する基礎的問題として, 有用細菌の分離と, その生産酵素の検討が主要である。この観点から, まず絹紡原料の精練においてはセリシンの種類にも留意する必要があることを認めたので, その考慮のもとに有用細菌を分離し, これを同定した後, その生産するプロテアーゼを抽出・精製してそれぞれ結晶状に調製しその性質を検討した。一般に好気性の有用細菌の酵素は, すべてセリシンに対して特異的に作用し, 各々単独で原料の精練は満足に達せられ, その性質はトリプシンに類似するものがあった。本文においてはBacillus vulgatusに例をとって説明した。これらの好気性の有用細菌を意志的に接種する方法により, 従来の自然発酵より能率のよい精練法を樹立することができたので, 集殖発酵精練法として工業的に応用した。次に嫌気性有用細菌のプロテアーゼは前記の好気性細菌の酵素と比較して, たんぱく基質に対し分解の容相を異にし, かつアミノ酸開裂の個所にも相違があることを指摘し, また両種の細菌において生育上の共生的現象も認めたので, 2種の有用細菌を同時に使用する共生発酵精練法をも樹立し, 原料の種類と性質に応じてこれを適用した。本文においてはBacillus circulansとClostridium sp.とに例をとって説明した。麻類原料の精練の研究においては, まず原料の種類により, その繊維束内に含有されるペクチンの性状が異なることを明らかにしたので, 有用細菌もこの見地から分離し, 同定した後, その生産するペクチン質分解酵素系の内容について解析した。各分離細菌の酵素の示す作用の特異性は, 精練作用において, 原料の種類に対して示す細菌の選択性と一致した。したがって集殖発酵精練法においては原料の種類に対し, これに適応する有用細菌を使用した。また共生発酵精練法の適用も行なった。これについて本文においてはBacillus mesentericus var. AokiとClostridium sphenoidesとの共生による精練効果の説明を行ない, またBacillus mesentericus var. AokiをBacillus subtilis sp.におきかえた場合の実用的な問題にも触れた。糸状菌を利用する場合は, その抽出酵素による酵素精練法の研究を行った。分離した有用な糸状菌としてPenicillium citrinumに属する1株の培養資料から調製した酵素について検討し, その精練に対する主作用としてエンド型のペクチナーゼ作用であることの推定を下した。
京都府立大学の論文
1965-09-01

繊維原料の醗酵精練に関する基礎的研究とその工業化(農芸化学部門)

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