Mucor racemosus NO. 50およびその変異株の凝乳酵素の精製とその性質
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概要
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親株Mucor racemosus No. 50およびその第4代NTG変異株No. 51の凝乳酵素の精製を行い,その性質を調べ以下の結果を得た. (1) 両菌株の凝乳酵素はペプスタチンにより顕著に阻害(IC50=1.3〜1.4×10-6M)され, AH-セファロース4Bを担体とし,ペプスタチンをリガンドとしたアフィニティクロマトグラフィーにより,比較的容易に,かつ高収率で電気泳動的に均一な精製酵素標品が得られた. (2) 両菌株ともMCA/PA比が4200〜4350と高い値を有する凝乳酵素(MCE)と130ときわめて低値で蛋白分解能力の強い別種プロテアーゼ(protease)を生産し,親株によるこのproteaseの生産量は, MCAを基準とした場合,全体の1%以下であったが, PAからみた場合, 50〜60%に達した.一方,変異株ではこのprotease生産量は親株の約1/2に低下しており,変異株の誘起による凝乳酵素標品のMCA/PA比の向上は,このprotease生産量の低下に起因するものであった. (3) MCEおよびproteaseは,カゼイン分解の最適pHがともに3.0,ヘモグロビンに対してはそれぞれ3.5および4.0でともに酸性プロテアーゼの一種で,カゼインに対するKm値はそれぞれ0.238および0.098%, Vmaxはそれぞれ0.556および0.327 (OD660nm)であった.また, MCEの分子量は36,000であった. MCEの凝乳活性の最適温度は1/100M CaCl2および1/1000M CaCl2を含む10%還元脱脂乳を基質としたとき,それぞれ55°Cおよび45°Cであった. MCAのCa2+およびpH依存性はMCEのほうがproteaseよりも低かった.熱安定性はpH 3.0では,両酵素とも51°C, 10分間, pH 6.0ではMCEは47°C, 10分間, proteaseは45°C, 10分間加熱でほぼ完全に失活した. proteaseはpH 5.0〜6.5で安定で, MCEはグリシンにより酸性域でのpH安定性が増大し, 0.08M以上のグリシン存在下でpH 4.0〜7.0の範囲で安定であった. MCEはCu2+, Fe2+およびHg2+により阻害され, SDSにより完全に失活, proteaseはpCMBおよびSDSにより顕著に阻害された.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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