温床床土に関する研究 (第8報) : 土と有機物の比率の異なる混合土の化学性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
火山灰土,荒木田,川砂の3種類の土に腐葉土の比率を変えて混合土を作り, その化学性を調べた。1. 置換容量はいずれの土においても腐葉土を加えることにより増加し, ことに荒木田, 川砂では顕著に増加した。2. 緩衝能力は川砂が最も弱く, ついで荒木田で, 火山灰土はかなり強かつた。腐葉土はアルカリ側で強かつたが, 酸性側では火山灰土に劣つた。いずれの土も腐葉土を加えることにより, 両者の中間の緩衝能力を示した。3. 与えたカチオンの種類によつて緩衝能力の程度は異なり, 一, 二の例外を除いてNa<K<NH4<Ba〜Caの順位であつた。腐葉土では1価と2価のカチオンとの間に顕著な差があり, 後者の場合に強い緩衝能力を示した。4. りん酸吸収係数は火山灰土は2270ですこぶる高く, 荒木田は207と少なく, 川砂および腐葉土は0であつた。火山灰土に腐葉土を加えることにより吸収係数はてい減した。5. 土壌を4週間 incubate して硝化作用を調べた。その結果は火山灰土や埴土では硝酸化成が順調に行なわれたが, 砂壌土やことに川砂では全く行なわれなかつた。川砂に有機物を少量添加したところ硝酸化成が起つた。火山灰土に腐葉土を加えた混合土では, いずれの無機, 有機質肥料区においても, 火山灰土区に比べて硝化作用が1〜2週間遅延した。この理由は一度風乾した腐葉土を使用したためと思われた。6. 以上の実験から, 荒木田や川砂に腐葉土を混合することによつて, 著しくカチオンの吸着性を増し, 緩衝能力を高め, 置換容量を増加し, それらの結果として肥料養分の溶脱を防ぐと共に, 施肥によるpHの変動を少なくする効果があることが判つた。また火山灰土に腐葉土を混合することにより, りん酸の吸着を著しくさまたげ, その肥効を高めることが明らかとなつた。これらの化学性の改善は前報(16)で述べたような物理性の改善と相まつて, 苗の生育に好影響を与えるものと推察される。また乾燥した腐葉土の使用は, 硝化作用を遅延させるので, 実際に適用の際には注意する必要があると思われる。
著者
関連論文
- 温床床土に関する研究 (第8報) : 土と有機物の比率の異なる混合土の化学性
- 温床床土に関する研究(第4報) : 果菜類苗の根系の発達と移植の植えいたみについて
- 温床床土に関する研究 (第5報) : 石灰窒素加用の床土たい積中の成分の変化, ならびに同熟成床土におけるトマト苗の生育
- 温床床土に関する研究 (第3報) : キュウリ, ナス, トマト育苗用速成床土
- 温床々土に関する研究 (第1報) : トマト育苗用速成床土
- 温床々土に関する研究 (第2報) : 床土の土壌水分がトマト苗の生育に及ぼす影響
- キャベツ結球葉中の糖分の季節的変動
- コモ代用のプラスチック製トンネル被覆資材の保温性
- トマトの高温障害に関する研究 (第3報) : 種々のステージの花蕾に及ぼす高温の影響
- トマトの高温障害に関する研究 (第1報) : 苗齢と障害の程度
- トマトの高温障害に関する研究(第2報) : 高温の持続時間と障害の程度
- イチゴの休眠に関する研究 (第2報) : 保温開始期と日長がダナーの生長, 開花, 結実に及ぼす影響
- イチゴの休眠に関する研究 (第1報) : 保温開始期がイチゴの発育に及ぼす影響の品種間差異
- 洋ナシバートレットの追熟について (第2報) : 冷蔵および追熟中の成熟過程ならびに呼吸量
- 洋ナシバートレットの追熟について(第1報) : 追熟温度と冷蔵処理の影響