カキ果実の脱渋性に関する研究 (第1報) : エタノール処理による樹上脱渋 (その1)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
発育期にある渋ガキの果実を樹上でエタノール処理することによつて脱渋する方法を検討し, 脱渋果のその後の形質について調査した.1) ポリエチレン袋に2〜5ml程度の希釈エタノール(5〜20%) を入れて果実を被袋しておくと, 自然に蒸発するアルコール蒸気によつて脱渋された. そのさい, アルコール蒸気は主に果面より果実に入つた. 脱渋に要する時間は処理の時期, 果実の大きさ, 使用したエタノールの濃度および量によつて異なつた. なお, 脱渋処理中およびその後においてとくに落果することはなかつた.2) 本法による脱渋効果を10品種の渋ガキについて比較したところ, 平核無, 作州身不知で最も早く脱渋し, 清州無核, 愛宕, 新平, 西条がこれにつぎ, 舎谷, 祇園坊, 葉隠および横野は脱渋困難であつた.3) 平核無について, 7月中旬から9月下旬まで半月ごとの間隔でこの方法により脱渋処理をした. その結果,i) いずれの時期の処理でもほぼ完全に脱渋し, いつたん脱渋した果実ではその後可溶性タンニンが増加することはなかつた.ii) 8月以降の脱渋処理は果実肥大に何ら影響を与えなかつたが, 7月中の処理は肥大をやや抑制した.iii) 樹上脱渋果の糖 (グルコース, フラクトース) 含量は脱渋直後から増加の傾向を示し, 酸 (リンゴ酸) 含量は収穫直前になつて著しい増加を示した.iv) 収穫時の樹上脱渋果は未脱渋果と変りない程度の堅い硬度を示した. なお, 早い時期に脱渋された果実では着色開始が早まつた.v) 樹上脱渋果には特徴的に褐斑の発生がみられ, とくに早い時期の脱渋果で最も強い褐斑を生じ, 処理時期が遅くなるにつれて褐斑量は減少した.4) 褐斑の発生について平核無を用いて若干の調査をしたところ, 褐斑は処理後2週間経過したころより発生し始め, その後徐々に増加した. ただし, 十分な量のエタノールで完全に脱渋した果実には強い褐斑の発生をみたが, 渋がわずかに残る程度のエタノール量で脱渋した果実にはほとんど褐斑の発生はみられなかつた. また, 褐斑は樹上に着生している果実でのみ発生し, 脱渋直後に採果して貯蔵した果実では1か月後でも褐斑の発生を全くみなかつた.
- 園芸学会の論文
著者
関連論文
- カキ果実の脱渋性に関する研究-2-エタノ-ル処理による樹上脱渋-2-
- カキ果実の脱渋性に関する研究-1-エタノ-ル処理による樹上脱渋-1-
- ソルビトールの生合成能を賦与したカキの形質転換体の耐塩性と生育特性
- 2種のストロベリーグァバ(Psidium cattleianum Sabine, Psidium cattleianum Sabine var.lucidum Degener)果実の成熟及び品質に及ぼす温度の影響
- ブドウの副しょう上での花房分化およびその発達におよぼすCCCと摘心処理の影響
- ITS領域の塩基配列情報に基づいたタイの Mangifera 属植物の系統分類
- Microcerasusを中心とするPrunus属果樹の種間交雑
- カキ果実における果肉の褐斑発生とポリフェノ-ルオキシタ-ゼ活性との関係〔英文〕
- カキ果実の組織内ガス組成の経時的変化及び数種のガス環境条件が種子のエタノ-ル生成に及ぼす影響
- ブドウの花芽分化の調節に関する研究 : II. ブドウの根に対する生長調節物質の処理が花房分化に及ぼす影響
- 湛水処理がリンゴ台木の生長と体内の生理的変化に及ぼす影響
- ブドウの花芽分化の調節に関する研究 : I. 副梢上での花房分化およびその発達に及ぼすCCCとBA散布の影響
- 呼吸阻害剤および数種の化学物質が核果類の根のcyanogenesisに及ぼす効果〔英文〕
- モモのいや地に関する研究-1-耐水性といや地の関連性と根におけるCyanogenesisについて
- 中国で生じた完全甘ガキ'羅田甜柿'の甘渋性に関する遺伝的特性
- ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)のS^f-RNase遺伝子特異的なPCR増幅のためのプライマーセットの開発(育種・遺伝資源)
- 自家不和合性の果樹生産における問題点と現状
- マメガキ (Diospyros. lotus) におけるアポミクト形成について
- カキ属 (Diospyros L.) 植物のITSとmatK領域の塩基配列情報に基づく系統分類
- ウメの自家和合性個体判別のための分子マーカー
- カキの耐凍性における休眠覚醒と温度環境との関係について
- 数種類の台木におけるリンゴ樹の耐塩性の比較
- カキ属数種の倍数性とゲノムサイズ
- カキ属植物の系統分類におけるcpDNA領域を利用したPCR-RFLP分析の有効性
- Prunus 属果樹類の配偶体型自家不和合性に関する研究 : 4倍体種の酸果オウトウ(Prunus cerasus)におけるS対立遺伝子の遺伝様式
- オウトウの配偶体型自家不和合性に関する研究 : 自家和合性4倍体種の酸果オウトウ(Prunus cerasus)における S-RNase の同定
- カキの胚軸由来カルスからの不定胚形成
- カキの品種同定のためのRAPD分析
- カキプロトプラスト培養における培養効率の向上
- 完全甘ガキ(PCNA タイプ)識別のための RFLP 分析の品種群における有効性
- AFLP 法を用いた日本および中国原産の完全甘ガキ品種群の遺伝的類縁関係の解析
- アグロバクテリウム法によるカキの形質転換系の確立とその応用
- 日長および温度がブドウの生育ならびに花房分化に及ぼす影響
- マメガキにおける異種および同種花粉の受粉によるアポミクトの形成
- 脱渋方法の違いがカキ‘平核無’果実の収穫•脱渋後の品質及び貯蔵性に及ぼす影響
- カキ果実の組織内ガス組成の経時的変化及び数種のガス環境条件が種子のエタノール生成に及ぼす影響
- ジベレリン処理によるブドウ‘マスカット•ベーリーA’ の無核果生産の安定化に関する研究 : (第1報)花型の変異と無核果形成との関係について
- 数種類の台木におけるリンゴ樹の耐塩性の比較
- カキ果実の発育•成熟過程における糖組成の変化とインベルターゼ活性との関連について
- ジベレリン処理によるブドウ有核品種の無核化作用について
- 甘ガキと渋ガキのタンニン物質の差異について
- AFLP法による栽培ガキ品種の遺伝的類縁関係の解析
- 完全甘ガキ選抜のために同定したRFLPマーカーの品種および交雑実生における有効性
- 完全甘ガキの早期選抜のための分子マーカーの同定
- 樹上果実の成熟に及ぼす温度環境の影響(第2報) : ブドウ‘巨峰’果実の着色に及ぼす樹体及び果実の環境温度の影響
- 西南暖地におけるリンゴ数品種の着色 : とくにアントシアニン生成とPAL活性, エチレン生成との関連について
- リンゴ果実の成熟に及ぼす果実温度の影響
- カンキツの耐寒性に及ぼす水ストレスの影響
- 栽培地を異にしたリンゴ果実の品質と気温との関係
- カンキツ及びアボカドの耐寒性に及ぼす低地温の影響
- Microcerasusを中心とするPrunus属果樹の種間交雑
- 3品種のブドウ果粒の成熟期におけるL-フェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性及びアントシアニン生成の変化
- 幼若性を異にするカキ (Diospyros kaki L.) の培養個体および実生の生長および発根特性の比較
- Agrobacterium rhizogenes A4株によるカキ (Diospyros kaki L.) の形質転換
- サイトカイニンの種類がカキのin vitro繁殖に及ぼす影響
- モモ, ネクタリン及びスモモの無機養分吸収に及ぼす各種の台木の影響
- 核果類の耐水性と湛水条件下におけるエタノールの集積
- モモのいや地に関する研究(第2報) : 根に含まれる生長抑制物質としての縮合性タンニンについて
- 呼吸阻害剤および数種の化学物質が核果類の根のcyanogenesis に及ぼす効果
- モモのいや地に関する研究 : (第1報)耐水性といや地の関連性と根における Cyanogenesis について
- ジベレリン処理によるブドウ‘マスカット•ベーリーA’の無核果生産の安定化に関する研究 (第2報) : ジベレリン処理に伴う奇形果の発生について
- 温度条件の異なる地域におけるカキ果実の発育および成熟様相の相違
- 異なる地域での甘ガキ‘次郎’の自然脱渋過程の解析
- リンゴの数種台木と穂木品種の組み合わせにおける耐水性の比較
- マイクロマニピュレーターを用いたブドウ果実の果粒肥大に伴う糖蓄積過程の細胞レベルでの解析
- マイクロマニピュレータによるカキ果実の細胞レベルでの糖代謝解析の可能性
- カキ果実の脱渋性に関する研究 : (第2報)エタノール処理による樹上脱渋 (その2)
- カキ果実の脱渋性に関する研究 (第1報) : エタノール処理による樹上脱渋 (その1)
- 湛水処理がリンゴ台木の生長と体内の生理的変化に及ぼす影響
- ブドウの副しょう上での花房分化およびその発達におよぼすCCCと摘心処理の影響
- ニワウメ及びユスラウメ台がモモ‘大久保’の矮化に及ぼす効果
- ウンシュウミカン果実の成熟に及ぼす果実温度の影響
- カキ"夫婦柿"やく由来カルスからの不定芽形成と再生個体のアイソザイム変異
- リンゴわい性台木の根ざし増殖に関する研究
- カキ数品種のin vitroでのシュ-ト増殖と発根
- 栽培地の異なるリンゴ果実における成熟期の糖組成の変化