本邦及び台湾省産野生型カメリア節ツバキのアントシアン色素分布の様相

概要

論文の詳細を見る
ツバキ属植物花弁のアントシアン色素として2次元薄層 (セルロース) クロマトグラム上の14個のスポットと,高速液体クロマトグラフィーを用いて検出可能なシアニジン-3-ガラクトシドを新たに加えた合計14個が挙げられる. 本報では本邦及び台湾省産の野生型カメリア節ツバキのアントシアン色素分布の様相を明らかにすることを目的とし, さらに色素を化学的指標 (chemical marker) として用いた場合のツバキの系統発生について論じた. その結果の概要は次のとおりである.ヤブツバキ, コキツバキ, ホウザンツバキ及びリンゴツバキはいずれも比較的単純な配糖体型を示す, いわゆる低次色素系を持つものであったが, これらのうちユキッバキと台湾省産ホウザンツバキはスポット1のみを持つのに対し, ヤブツバキ, 本邦産ホウザンツバキ, リンゴツバキは主要なスポット1に加え, 総色素の12〜53%に相当するスポット3, 4及び5を持つ点で大幅に異なった.また, 前者のツバキ群はスポット1に占めるシアニジン-3-ガラクトシドはほぼ50%以上と多量であるのに対し, 後者のそれは9〜29%と比較的少量である点も異なった.以上の色素分布の様相から, ユキツバと台湾省のホウザンツバキは同じ祖型ツバキから系統発生したと考えられた. さらにヤブツバキ, 本邦産ホウザンツバキ, リンゴツバキも前者とは異なるが, 同じ祖型ツバキから系統発生したと考えられ, この場合, 本邦産ホウザンツバキの現間氷期開始後の北進過程でリンゴツバキとヤブツバキが派生したと推察された.
園芸学会の論文

本邦及び台湾省産野生型カメリア節ツバキのアントシアン色素分布の様相

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク