わが国の牛肉一貫生産システムのシミュレーション,特に生産効率に対する母牛の遺伝的成熟サイズの影響
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概要
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汎用シミュレーションモデルを用いて,わが国の牛肉一貫生産システムにおけるさまざまな生産効率に対する母牛の遺伝的成熟サイズの影響を調べた.そのようなシステムの生産性を表す指標として,(1) 飼料摂取代謝エネルギー(ME) 1MJ当たりの後代の出荷時体重(kg)で表される生物学的効率(El),(2) 飼料摂取ME量1MJ当たりの母牛ならびに後代の出荷時体重で表される生物学的効率(E2),(3) 飼料摂取ME量1MJ当たりの筋肉量で表される生物学的効率(E3),(4) 飼料費に対する生産物からの利益の比で表される経済効率(E4)の4種を用いた.さまざまな水準の母牛の成熟体重(WA)ならびに3水準の去勢肥育牛の市場出荷時体重(WM; 400kg, 500kgおよび600kg)を仮定し,他の入力条件はわが国の黒毛和種を用いた典型的牛肉生産条件を想定して設定した.得られた結果の要約は次の通りである.(1) すべての生物学的効率はWAの増加に伴って上に凸の2次曲線を描いて変化した.また,その影響はWMが増加するにつれて大きくなり,その傾向は特にE1に関して顕著であった.(2) E4に対するWAの影響は,WMによってさまざまであった.これは,モデルで用いられている生物学的因果関係が時間因子と独立であるにもかかわらず,主として牛肉の価格を決定する脂肪交雑が時間の関数として推定されているためと考えられた.(3) 日本の牛肉生産システムにおいて経済的に最適であると考えられたWMが600kgの条件下では,上記4種の効率を最大にする最適なWAは,それぞれ,E1に関しては622kg, E2に関しては699kg, E3に関しては789kgならびにE4に関しては515kgであった.この結果より,用いるべき効率によって最適なWAが異なる条件下では,方針決定者は,最適な遺伝的サイズを決定する前に生産目標として採用する効率を選ぶべきであろうと考えられた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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