肉用牛の成長と生産に関するシステム分析, とくにその生物学的効率について
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概要
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わが国の肉用去勢牛を対象に生物学的シミュレーションモデルを用いて肥育時の成長 (1日増体重;DG), 肉質 (筋肉・脂肪比;MFR), ならびに2種の生物学的効率 (1kg増体に要する飼料エネルギー量;FCR;および筋肉1kg生産に要する飼料エネルギー量;MFCR) に対する飼料の量 (飼料エネルギー水準;MEL) と質 (代謝率;q) ならびに遺伝的サイズ (遺伝的成熟時体重;A) の効果をさまざまな出荷時体重において調べた.シミュレーションの結果は感度解析と反応曲面法を用いて分析した.各要因の評価範囲としては, MELは食欲の物理的制限と生理的制限から求められる飽食量の80-100%, qは0.50-0.70, Aは500-600kgとした.得られた結果の概要は次のとおりである.(1) DGはいずれの出荷時体重においてもMEL, q, Aが増加するどとに2次曲線状に増加した.また, qとAの効果は出荷時体重が大きくなるにつれて増加した.すべての1次の交互作用 (MEL×q, MEL×A, q×Aは1%水準で有意であった).(2) MFRはすべての出荷時体重においてMELやqが増加するどとに2次曲線状に高くなり, 逆にAの増加に伴って低くなった.このことより, 脂肪含量の高い肉は飼料の量と質を高くし, かつ小型の牛を用いることにより生産されることが示された.(3) FCRはすべての出荷時体重においてMEL, q, Aの増加に伴って2次曲線状に減少した.それゆえ, 増体に対する飼料エネルギーの変換効率は良質の飼料を多く給与し, 大型の牛を用いることにより向上すると考えられた.(4) MFCRについてはFCRと同様の結果が得られたが, FCRに比べてMELの効果は小さく, Aの効果は大きかった.(5) 以上の結果より肥育牛に関する重要な形質はMEL, q, Aの変化によって変えられる可能性が示された.将来, 栄養学, 育種学, 肉科学など畜産学の多くの分野を統合するこの種の研究は肉牛生産のどとき複雑なシステムの問題解決にますます必要になると思われる.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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