肉用牛の成長と生産に関するシステム分析, とくにその経済的評価について
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概要
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生物的・経済的シミュレーションモデルにもとづき, 経済的観点からわが国における現行の黒毛和種去勢肥育システムを評価し, 更に生産効率を改善する方法を検討した.本研究においては3種類のシミュレーション実験を行なった.結果の概要は次のとおりである.(1) 支出当りの収入で表わされる経済効率に対して飼料エネルギー水準 (<I>MEL</I>), 代謝率 (q), 遺伝的成熟時体重 (A) ならびに出荷時体重 (<I>MWT</I>) の及ぼす効果を反応曲面法を用いて検討した結果, 経済効率は<I>MEL</I>, q, <I>MWT</I>の増加に伴って増加するが, Aに関しては500kgと600kgの間に最大値の存在することが判明した.また湾の効果は<I>MEL</I>, q, <I>MWT</I>のような環境要因によって有意に影響された。このことより最適な家畜の選択は他の環境要因を十分に考慮した上で行なうべきであることが示唆された.(2) 3水準の<I>MEL</I>, q, Aにおける経済効率の推移を, 出荷時体重を450kgから700kgまでの範囲内に設定して調べた結果, わが国における現行の肥育システムをシミュレートした場合, 経済効率を最大にする最適出荷時体重は641kgであった。この出荷時体重は現状の平均出荷時体重である630kgとほぼ一致した.また最適出荷時体重は<I>MEL</I>, qならびに.Aによっていろいろと変化することが示された.(3) 将来, 牛肉の貿易自由化が実現され, 牛肉を枝肉1kg当り1000円で生産しなければならないと仮定した時の現行の肥育システムと, 種々の代替システムとを比較した結果, 現行のシステムでは経済効率は0.681となり, その損益はかなり大きなものであった.そこで, 飼養管理の改善, 家畜の選抜や交雑などいくつかの技術的革新がなされたと仮定して代替システムのシミュレーションを行なったところ, 経済効率は1.0に近い0.993まで改善された.しかし本研究で採用されたシミュレーションの条件内ではいずれの場合も正の利益は得られなかった.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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