分娩後の雌牛に対する雄牛の行動的関与と発情回帰との関係
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概要
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分娩直後の雌牛に対する雄牛の行動的関与と子宮修復,初回排卵および発情回帰という性現象との関係を実験牛群で調査した.春分娩牛である1989年の14頭(実験1)および1990年の12頭(実験2)を同数からなる2群に分け,一方にまき牛経験のある雄牛を入れ,それぞれ約40日間飼養し,行動および発情を調査した.雌牛単独群にも雄からの視覚刺激および嗅覚刺激は可能であった.雄雌間の行動的関与量は,実験1および2と,それぞれ10.9/hおよび10.8/hであった.そのうち,雌からの関与は実験1および2で,それぞれ12.2%および17.4%で,雄雌の関係は雄からの行動に大きく依存していた.しかも,攻撃行動は極端に少なく,実験1および2でそれぞれ2%および0%で,親和行動と性行動が大半を占めた(実験1:66%と32%,実験2:52%と48%).分娩後30日および50日近辺に雄からの行動的関与が多くなる傾向がみられ,それは無発情排卵に対応するとも考えられた.分娩後の初回排卵と子宮修復に要した平均日数は雄導入群で早く,特に実験1での子宮修復日数の差は有意であった.(P<0.01).実験1では調査中に発情は回帰せず,PGF2α投与により発情を誘起したが群間に誘起率に差はみられなかった.実験2では,調査中に雄導入群のうち4頭が発情し,発情回帰のなかった雌単独群との差には有意であった(P<0.05).実験1および2で発情が回帰した雌牛としなかった雌牛とで,回帰前の雄からの行動的関与量を比較すると,前者に対して多い傾向が見られた.以上より,牛においても,雌の性現象に対してmale effectが見られ,それは雄からの行動的関与が関係する可能性が示唆された.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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