搾乳室進入行動の強化刺激

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搾乳室進入行動の学習過程について3つの実験を行なった.実験Iでは,初産牛,分娩牛および一時隔離牛での搾乳室進入行動を調査した.育成牛群にいた初産牛を分娩後1週間目に搾乳牛群に導入すると,初めは追込みによって進入したが,6〜10回目の搾乳時からは自発的に進入し,搾乳室での報酬(濃厚飼料)に対して学習が容易に成立した.2〜3か月間,搾乳牛群から離れていた分娩牛および泌乳期間中に一時的に隔離された搾乳牛を群に戻した場合は,すべての牛が1回目から自発的に進入し,2か月以上前の学習を記憶していた.実験IIでは,去勢牛を用い,搾乳室で飼料を給与した場合の進入行動学習過程を調べ,更に学習後飼料給与を停止し,その行動の消去過程を調べた.去勢牛は自発的進入行動を3-6回目の強化回次から開始した.去勢牛でも搾乳室へ自発的に進入し,しかも初産牛よりも早く学習したことから,搾乳室進入行動の強化刺激としての雌性的要因(乳房膨満からの開放)は大きくないと考えられた.飼料給与を中止しても搾乳室進入を続けたが,7〜17回日には進入を停止した.実験IIIでは,搾乳室で報酬を与えない場合の進入行動学習過程と進入順位の安定性を調査した.自発的進入は開始直後の1〜7日目では群全体の18.3%と低かったが,14〜15日目になると50%に達した.しかし,この割合はその後はほとんど増加せず,100〜102日目においても61%であった.各個体の搾乳室進入順位の分散は非常に大きく,平均順位も調査の前半(1〜15日)と後半(42〜102日)とでは全く異なっていた.以上より,搾乳室進入学習の最も効果的な強化刺激は搾乳室内での飼料給与であり,雌性的要因や回避学習の効果は小さいことが確認できた.
社団法人日本畜産学会の論文

搾乳室進入行動の強化刺激

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