皮革の熱変性に関する研究 : IV. 植物タンニン鞣製革の比較的高温熱処理の影響
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概要
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異なった鞣皮度をもつ植物タンニン革に及ぼす比較的高温熱処理の影響を物理的性質および水抽出物の組成の変化から考察した.なお,この場合に用いた植物タンニンは,縮合型タンニンとしてミモサ•タンニンと加水分解型タンニンとしてチェストナット•タンニンである.1. 植物タンニン革の熱処理による物理的性質の劣化が認められ,熱処理が引張強さに及ぼす影響は比較的少ないが,伸びは大きく減少し,柔軟度の荷重も増加し,伸びおよび柔軟度について有意差が認められ,明らかに変化したことを示した.そしてこの場合に,鞣皮度による差は全体として認められなかったけれども,チェストナット•タンニン革の場合,伸びについて,鞣皮度が高くなるほど熱処理による影響は大きいことを認めた.また,物理的性質の熱処理による変化の程度は,低水分区(2.19-5.46%)よりも高水分区(19.29-21.97%)において大きく,水分の影響が明らかに認められた.2. 水抽出物の組成について,溶出蛋白質量および溶出タンニン量を測定した.植物タンニン革の熱処理による蛋白質の溶出量は,未鞣製皮より非常に少なく,熱処理による皮構成蛋白質の分解はきわめて少ないことを認めた.溶出タンニン量について,ミモサ•タンニン革およびチェストナット•タンニン革ともに,鞣皮度が高くなるほどタンニンの溶出量は増加するが,熱処理によってはほとんど変らず,190°Cの熱処理では減少する傾向が認められ,また,水分含量による差は認められなかった.タンニン溶出量の高温熱処理による減少は,タンニン自体の酸化によるものと考えられる.また,タンニンの溶出量が,ミモサ.タンニン革よりチェストナット•タンニン革において大きいが,このことは,タンニンの性質による違いであって,チェストナット•タンニンが加水分解型のタンニンであることに帰因するものであろう.
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