アシドーシスめん羊の腎における糖新生とアンモニア産生
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概要
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正常および塩酸注入により作成したアシドーシスめん羊について,U-14C-glucoseのprimedinfusionによる同位元素希釈法を使用し,腎におけるグルコース産生(RGP)と利用率(RGU)ならびに全生体におけるグルコース利用率(TBGU)を求め,また腎におけるアンモニア産生量(NH3•P)を測定しRGPとの関連性を定量的に検索した.アンモニアの尿中排泄量は,アシドーシス期には正常時の13倍に増加し,NH3•Pも9倍に増加した.TBGUはアシドーシス期にやや減少したが有意差はなかった.RGPは正常めん羊で0.47mg/min/kg,アシドーシスめん羊で0.85mg/min/kgと正常の約1.8倍に増加し,TBGUに対する割合も正常めん羊の21%に対してアシドーシスめん羊では40%と2倍に増加した.RGUも正常およびアシドーシスめん羊で,それぞれ0.26,0.63mg/min/kgとアシドーシスによりその利用は2.5倍に増加した.しかし,(RV-A)差は正常めん羊とアシドーシスめん羊で有意な変化は見られなかった.また,glutaminase-glutamic dehydrogenase pathwayを仮定して計算すると,グルタミンから腎で産生されたグルコースは正常めん羊で0.8%,アシドーシスめん羊で4.2%であった.以上の結果より,pHの低下は見掛上のRGPになんら影響を及ぼさないように見えるが,生体内酸塩基平衡のバランスが崩れた状態では,腎の糖新生を増加させる一方,RGUも増大させていることが明らかとなった.さらに,アシドーシスはNH3•Pの増加と糖新生の増加を惹き起し,それらの間には相互関係があるように見えるが,グルコースへのグルタミンの寄与率は小さく,腎の糖新生の増加が酸塩基平衡維持の為のアンモニア産生の増加の2次的なものではなく,何か他の因子により影響されていることが示唆された.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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