やぎの第一胃内における脂質の加水分解と水素添加
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概要
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反芻動物の第一胃内において,給与脂質は第一胃内微生物によって加水分解をうけ,また不飽和脂肪酸は水素添加されて飽和脂肪酸となることが認められている.このような第一胃内においての脂質のうける変化の過程を明確にするために,不飽和脂肪酸としてのリノール酸を多量に含むトリグリセリドを給与した場合の,第一胃内における脂質各分画とその脂肪酸組成の経時変化を,飼料給与後24時間にわたって検索した.やぎ2頭を実験に用い,乾草と大豆粕を基礎飼料とし,リノール酸含量が77%のサフラワー油を50g加えて実験飼料とした.実験飼料給与後,24時間にわたって9回,第一胃フィステルより第一胃内容を採取して総脂質を抽出した.抽出総脂質は薄層クロマトグラフ法によってトリグリセリド,モノおよびディグリセリド,FFA,リン脂質,コレステロールおよびコレステロールエステルに分画して,それぞれ定量した.各脂質分画についてその脂肪酸組成をガスクロマトグラフ法によって定量した.その結果は次のように要約される.1. 第一胃内においてトリグリセリドはきわめて短時間内に加水分解をうける.このために第一内にはFFAがもっとも多く存在した.またモノおよびディグリセリドが常に9-10%存在してほとんど経時変化がなかった.リン脂質,コレステロールも常にほぼ一定量が存在した.2. FFA分画にはオレイン酸が給与後6時間にすみやかに増加し,以後やや減少した.ステアリン酸が12時間後まで徐々に増加し,以後その量を保った.リノール酸はFFA分画に6時間以後ほとんど存在せず,遊離した脂肪酸はただちに水素添加をうけることが認められた.トリグリセリド分画の脂肪酸組成は採食9時間以後はほぼ一定の組成を示し,トリグリセリドへの水素添加は比較的少なく,またその脂肪酸組成より9時間以後のトリグリセリドには菌体脂質の存在が推察される.3. モノおよびディグリセリドの脂肪酸組成は,サフラワー油の給与によっても一定の変化はなく,トリグリセリドの部分水解によるこれらの蓄積はほとんどないと考察される.常時10%前後存在するモノおよびディグリセリドは菌体脂質に由来するものであることが推定される.4. リン脂質はその脂肪酸組成より主として菌体脂質であることが考えられる.リノール酸およびオレイン酸がリン脂質分画においてFFA分画とほぼ同樣の傾向を示すことより,これらの菌体リン脂質へのとりこみが推定される.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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