めん羊の単離脂肪細胞に対するインスリン結合の特性
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概要
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一般に反芻動物はインスリンに対して抵抗性あるいは低感受性であるとされているが,その耐性機構に関しては不明である.今まで反芻動物において,単離が困難であるとされていた脂肪細胞をめん羊の脂肪組織より,コラゲナーゼ処理にて単離することに成功した.そこで,この単離脂肪細胞を用いてインスリン受容体に対するインスリン結合のKineticsを解析することにより,ラットのそれと比較し,反芻動物におけるインスリン抵抗性の機構の一端を解明した.めん羊の単離脂肪細胞に対する125I-insulinの特異結合は4.82±0.41%とラットのそれの70%であった.なお,インスリン結合は3.9×10-11Mから4.2×10-9Mの生理的濃度範囲でラットに比し有意(P<0.02)に低かった.negative cooperativity modelに従いScatchard plotを解析した結果,めん羊およびラットのKe(受容体がインスリンによって全く占有されていない時の親和定数)は,それぞれ1.29×108M-1,1.76×108M-1,Kf(全受容体がインスリンによって占有された時の親和定数)は0.50×108M-1,0.67×108M-1であり,Ro(全受容体数)は2.32×105 sites/cell,2.56×105 sites/cellであった.さらに,average affinity profileは受容体占有率10%時での親和力がラットの50%であることを示した.以上の解析結果から,めん羊における低インスリン結合は,受容体数の違いというよりはむしろ低親和力によるものであり,このことが反芻動物におけるインスリン抵抗性の一因をなすものと考えられる.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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