めん羊単離脂肪細胞のインスリンに対する感受性および反応性の解析
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概要
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成雌めん羊皮下脂肪組織よりコラゲナーゼ処理にて単離した脂肪細胞を使用し,インスリンに対する感受性および反応性を定量的に特徴づけ,ラットのそれと比較することにより,反芻動物におけるインスリン抵抗性の機構の一端を解明した.インスリンのグルコース酸化およびグルコースからの脂質合成を指標とした細胞内グルコース代謝の促進効果は,ラットと同様に,用量反応的に認められ,その最大効果は基礎値の1.5〜1.8倍に増加した.しかしながら,ラットに比べ基礎値,最大効果とも低値であり,反応性がラットの24〜31%と絶対的に低下していた.しかし,half-maximal insulin effectを示すインスリン濃度にて感受性(ED50)を評価した結果,めん羊において感受性の低下は観察されなかった.また,インスリン結合の用量反応曲線が生物学的効果の用量反応曲線とは一致せず,僅か数%の受容体がインスリンによって占有されれば,その生物学的効果が最大となり,めん羊脂肪細胞もラット脂肪細胞と同様に,"spare receptor"を所有し,インスリン受容体が正常に機能していることが明らかとなった.一方,グルコースの膜輸送が細胞内グルコース代謝に対して律速段階であると考えられている低グルコース濃度(0.1mM)において,感受性に有意差は観察されなかったものの,めん羊のインスリンに対する反応性はラットのそれの21%以下と低値であった.以上の解析結果から,めん羊脂肪細胞におけるインスリン抵抗性は受容体結合以後の反応の低下に帰因していることを示唆した.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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