牛乳脂質の特性に関する研究 : IV. 牛乳脂質のトランス酸含量
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
全国22地区の1年間の牛乳脂質試料264点につき,赤外分光法によってトランス酸含量を測定し,トリエライジン含量として表わした.その結果,平均値は8.38%,標準偏差は1.45%であった.北海道および岩手においては,トランス含量の季節的変動が明瞭であって,夏季は11%以上となり最高13.7%のものもみられ,冬季は6〜8%に低下する.大都市近郊な近し専業地域においては季節的変動がほとんど認められず,常に含量が高い.その他の地域においては,季節的変動がやや認められて夏季に高くなるものと,ほとんど変動の認められないものとがあるが,いずれも6〜9%の範囲にある.二重結合のうちトランス化したものの割合を示す指標として,沃素価から換算したトリオレイン含量に対するトランス酸含量の比率T/U(%)を求めた.T/U率の平均値は20.6%,標準偏差は10.0%であった.T/U率はトランス酸含量と強い正の相関があり,その地域的季節的変動はトランス酸含量と同じ傾向にある.ただし,大都市専業地域においてはトランス酸含量が高いにもかかわらず,T/U率は必ずしも高くない.乳脂肪中のトランス酸は,飼料中の多価不飽和脂肪酸が反芻胃内で水素添加される際に生じたトランス酸に由来するものといわれているので,北海道のように夏季に牧草が多量に供与される地域においては,トランス酸の含量およびその不飽和酸中の割合が上昇するが,農産製造粕•濃厚飼料が多く与えられる地域では季節的変動が小さく,かつ不飽和酸中の割合もほぼ一定しているものと考えられる.上昇融点とトランス酸含量の間には,相関係数0.172の有意な単相関が認められる.また,上昇融点に対する沃素価とトランス酸含量の重相関は有意であるが,上昇融点とトランス酸含量の間の偏相関は有意でない.したがって,トランス酸が乳脂肪の上昇融点に影響をもっていることは明らかであるが,その影響の仕方は単純なものではなく,更に検討が必要である.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
関連論文
- 牛乳脂質の特性に関する研究VII牛乳脂質トリグリセリドのβ位脂肪酸組成,および主要構成脂肪酸のβ位への結合比率
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : I. 牛乳脂質の沃素価,けん化価,融点および色調
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : IV. 牛乳脂質のトランス酸含量
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : III. 牛乳脂質の脂肪酸組成
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : II. 牛乳脂質のトリグリセリド組成
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : V. 牛乳脂質のステリン
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : VI. 牛乳脂質の特性の変動と飼養条件との関連
- 乳脂肪-バターオイル
- コンデンスミルクとアイスクリームのレオロジー
- リノール酸およびオレイン酸代謝におよぼすリノエライジン酸投与の影響(続報)
- Bifidobacterium longum M-7によるH2O2の産生とその生残性に及ぼす影響
- 日本人の人乳総アミノ酸組成および遊離アミノ酸組成
- 加熱による牛乳の物理的および化学的性質の変化
- インドフェノール法による改良窒素測定法