牛乳脂質の特性に関する研究 : VI. 牛乳脂質の特性の変動と飼養条件との関連
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
牛乳脂質の特性を研究するために試料を採取した22地区における乳牛飼養条件の調査を行ない,その結果を次のように分類した.(1) 夏は放牧,冬はサイレージを主とする北海道(2) 粗飼料を主とするが,放牧を行なわない,山間地をもつ地域(3) 粗飼料と濃厚飼料を併用する大都市の近県地域(4) 農産製造粕類を多用し,緑飼の少ない大都市の近郊ないし市街化地域(1) の場合の夏季には,牧草からC18:3の供給が多く,これが乳脂肪に沃素価•C52/C36比•トランス酸含量の上昇,けん化価•C16/C18:1比の低下をひき起し,冬季はサイレージ•乾草にC16が多くC18:3が少ないために夏季と反対の変化が起るものと考えられる.(4) の場合は年間を通じて多量の粕類などの濃厚飼料が給与され,それからC18:1,C18:2が供給される一方,粗飼料が少ないためにC16以下の生合成が少なく,その結果C18酸の割合が異常に高くなり,それが高いC52/C36比,抵いC16/C18:1比という特徴となって現われたもの考えられる.(2)と(3)は(1)と(4)の中間的段階であり,牛乳脂質の特性もそれぞれの飼養条件を反映したものと考えられる.大都市専業地域の牛乳脂質の特性をさらに検討するために,東京と大阪の市街化地区と近郊農村の秋から冬にかけての合乳と個乳,および大阪付近の4地区の1年間の合乳について脂質特性の測定を行なった.市街化地区の牛乳脂質は,沃素価とC52/C36比が異常に高く,C16/C18:1比が低く,またカロチン含量がきわめて低いという顕著な特徴がある,これに対し,近郊農村のものはそれほどには異常と認められなかった.また,類似した飼養条件下にある大都市専業型の牛乳脂質でも,地区によって上昇融点,トランス酸含量あるいはコレステリン含量などに差がみられた.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
著者
関連論文
- 牛乳脂質の特性に関する研究VII牛乳脂質トリグリセリドのβ位脂肪酸組成,および主要構成脂肪酸のβ位への結合比率
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : I. 牛乳脂質の沃素価,けん化価,融点および色調
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : IV. 牛乳脂質のトランス酸含量
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : III. 牛乳脂質の脂肪酸組成
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : II. 牛乳脂質のトリグリセリド組成
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : V. 牛乳脂質のステリン
- 牛乳脂質の特性に関する研究 : VI. 牛乳脂質の特性の変動と飼養条件との関連
- 乳脂肪-バターオイル
- コンデンスミルクとアイスクリームのレオロジー
- リノール酸およびオレイン酸代謝におよぼすリノエライジン酸投与の影響(続報)
- Bifidobacterium longum M-7によるH2O2の産生とその生残性に及ぼす影響
- 日本人の人乳総アミノ酸組成および遊離アミノ酸組成
- 加熱による牛乳の物理的および化学的性質の変化
- インドフェノール法による改良窒素測定法