アマモの葉上着生群集の現存量および種組成の葉齢間における変動
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概要
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沿岸生態系や物質循環において重要な役割を果たしていることが示唆されつつも、葉上着生群集の種の遷移や現存量の経時的な変化を調べた例は少ない。そこで、アマモ葉上に生育する着生群集を採取し、その現存量と種組成を葉ごとに調べ、葉齢間で比較した。その結果、現存量(クロロフィルa、粒状有機炭素・窒素)と細胞数は葉齢が高くなるほどに高密度であり、最も若い葉を基準にするとその差はPOCで最大21倍、細胞数で最大192倍であった。優占種はシアノバクテリアのLeptolyngbya sp.、珪藻類のCocconeis scutellum、Campylopyxis garkeana、Gomphonemataceaeなどであったが、葉齢と優占種の変化には統計的に有意な差は認められなかった。着生群集中のPOCは珪藻類の細胞数と有意な相関が認められたが、全細胞数との間では認められなかった。このことはシアノバクテリアのLeptolyngbya sp.は細胞数で優占したが、細胞体積が珪藻に比べて顕著に小さい(100〜700分の1程度)ためにPOCの増加への寄与が小さいことが原因と考えられた。すなわち、葉上着生群集の中で、珪藻類が有機炭素で示される現存量の主体であることが示唆された。さらに、葉齢の高いものはPOC/DWが低く、無機物含量の多い浮泥等がより付着しやすい環境になっていたと考えられる。
- 2009-12-00
著者
-
吉田 吾郎
水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所
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吉田 吾郎
(独)水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所
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吉田 吾郎
独立行政法人水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所:広島大学大学院生物圏科学研究科
-
新村 陽子
海洋プランニング(株)
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吉田 吾郎
瀬戸内海区水産研究所
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吉田 吾郎
水研セ・瀬戸水研
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