ニューラルネットワークを用いた閉鎖性海域における化学的酸素要求量の変化予測

概要

論文の詳細を見る
沿岸海域の生態系問題において、自然・生物環境のモニタリングと環境予測技術の開発は重要な研究テーマである。前報では、閉鎖性内湾漁場で現地観測データを用いて植物プランクトンのニューラルネットワーク解析を行い、植物プランクトン変化の予測モデルを構築した。引き続いて、本報では海域の水質汚濁指標の一つである化学的酸素要求量CODの変動を表層から底層までカバーできる予測手法を検討したものである。閉鎖性海域での有機物汚濁の原因は、河川を通じて陸域から流入する有機物のほかに、海域内で主として植物プランクトンの増殖によって生産される、いわゆる内部生産有機物（内部生産COD）に由来する。閉鎖性海域の湾岸域では、利水、水産資源供給の場などとして経済的価値を持つだけでなく、自然環境および生活環境としても多様な価値を持つ。海域での環境評価項目は数多くあるが、このうち水質やそれによる生態系破壊の社会・経済的影響を適正に評価する必要がある。海域の水環境の保全・管理を効果的に行うためにも、対象海域の水質変化機構を正しく評価しておく必要がある。