単為発生胚からのES細胞樹立と分化多能性の検討
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概要
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現在、生命科学領域の研究に幅広く使われているES 細胞は、その殆どが受精卵より発生した胚に由来している。特に胚の中でも将来の胚体部分(原始外胚葉;エピブラスト)より派生してくるため、ES細胞の最大の特徴でもある分化全能性は胚の個体発生能力によると考えられる。一方、マウスの初期胚はエタノールやストロンチウムの刺激によって単為発生的活性化を受け、雌性ゲノムのみで発生することが知られている。これらの胚は通常、産仔に至ることはないが、原始的な胚体を有するためES 細胞の樹立は可能である。本実験では、単為発生させたBDF1 マウス胚よりES 細胞を樹立し、その分化能力を検討することを目的とした。37 ラインを樹立し、ランダムに選択した7 ライン全てがAP 活性、Oct-4、SSEA-1 抗原を発現していることが確認された。このうち実験に用いた2 ラインはICR マウス胚盤胞へのインジェクションによりキメラマウスに寄与した。また、SCID マウスの大腿部に皮下注射したとき、複雑に発達したテラトーマを形成した。これらのことから、単為発生胚を由来するES 細胞はin vivo で高い分化多能性を有していることが示唆された。さらに、これらのES 細胞はin vitro での分化誘導にも従い、目的に応じた系で神経様細胞、幼若肝細胞、心筋細胞を形成した。以上より、単為発生胚由来ES 細胞は従来の受精胚由来ES細胞に順ずる分化多能性を持っていることが確認された。
- 近畿大学先端技術総合研究所,キンキ ダイガク センタンギジュツ ソウゴウ ケンキュウショ,Kinki daigaku sentangijutsu sogo kenkyushoの論文
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