就労を目的として滞在する外国人における書字能力の分析(2) : 書字能力の量的習得に影響を与える属性
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概要
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本研究の目的は就労外国人における書字能力の量的取得に影響を与える属性を明らかにすることにある。先行研究として、1995年7月から1年間行われた断続的書字能力調査と2000年12月から1年間実施された横断的書字能力調査がある。それらの先行研究では、1)姓名などの身近なカタカナ、カタカナ語の書字能力の習得は進むが、住所、来日時期、職業などをカタカナ、ひらがな、漢字仮名混じりで書字する能力の習得は意識的な学習が行われない限り進まない、2)1995年から、2001年の調査時点までの就労外国人における書字能力の習得状況は変化していない、という結果が示された。本稿では、このうち2000年12月から1年間実施された横断的習字能力調査資料と生活環境、言語環境、学習環境に関する属性を聞いたアンケート調査資料をクロス集計することにより分析を進めた。その結果、1)「日本語学校における学習経験」、「日本語学習経験」など意識的な学習機会、特に「読み書き」に焦点をおいた学習機会があること、2)日本語能力の自己評価の高さ、特に「読む」、「書く」という文字を使用する日本語能力の自己評価の高さ、の二属性が書字能力の量的習得に最も強い影響を与えることが明らかになった。この結果から、書字能力の量的習得を促進するためには、日本語学校等のフォーマルな学習機会、それも「読み書き」に焦点をおいた学習機会が与えられることが不可欠であるという示唆が得られた。一方、書字学習能力の習得に影響を与えると予想された属性のうち、子供の有無、就労実態などは書字能力の量的習得には影響を与えないことも示された。
- 2003-10-30
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