陸域の改変と沿岸生態系の変化(シンポジウム:陸と海の相互作用-海は陸にどのように依存しているか?-)
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概要
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陸域の改変による沿岸生態系への影響を,直接的影響と間接的影響とに分類し,どのような例があるのかについて検討する.直接的影響とは,干潟,藻場,サンゴ礁などの浅海域生態系の重要な構成要素を直接的に破壊する陸域における人的な活動の影響であり,具体的には沿岸部での埋め立てなど不可逆的な陸域の拡大である.直接的影響は,干潟,藻場,サンゴ礁だけを破壊するのではなく,生活史の中でこれらの場所を産卵場,生育場として利用する動物の生産・再生産に影響を及ぼし,個体数を減少させる要因となる.コンクリートを使用した河川改修やダム建設は,海と淡水とを往復する両側回遊性魚類の淡水域における生息場を直接奪う,あるいは,生活史を直接寸断するという影響を及ぼすので,直接的影響に分類される.間接的影響とは,河川水に含まれる物質の量を変化させることで沿岸生態系を変えるような陸域の改変であり,含まれる物質の量の変化が物理的な作用を通じて影響するものと生化学的作用を通じて影響するものとに分けられる.ダムや灌漑・排水施設の建設,森林の伐採,農耕地の拡大,農業による肥料の大量使用,都市下水や工場排水などが間接的作用の原因となる.間接的物理作用は,河川流量や土砂などの堆積や濁度の増加などが沿岸生態系に物理的に作用しそれを変化させるもので,塩分分布,海水密度分布と付随するエスチュアリー循環,土砂供給と堆積および侵食などを介して沿岸域における生物の輸送や生息場の消失に影響を及ぼす.間接的生化学作用には,栄養塩などの海域への供給量とそれに依存する生物的な活動を介して沿岸生態系を変化させるもの(富栄養化や貧栄養化)と重金属や内分泌攪乱物質などの毒性物質の負荷量が増加し沿岸生態系を変化させるものがある.直接的な作用についても,間接的な作用についても研究は十分には行われていないので,今後,陸域から海域を水の循環に沿った生態系の総合的なモニタリングや調査が必要である.
- 日本海洋学会の論文
- 2003-02-24
著者
-
仲岡 雅裕
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター水圏ステーション厚岸臨海実験所
-
杉本 隆成
東海大海洋
-
小松 輝久
東京大学海洋研究所
-
仲岡 雅裕
千葉大学自然科学研究科
-
仲岡 雅裕
千葉大学大学院自然科学研究科
-
杉本 隆成
東京大学海洋研究所
-
仲岡 雅裕
千葉大学大学院理学研究科
-
仲岡 雅裕
千葉大学自然環境研究科
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