看護の経験年数別にみた病院の老年看護の実態
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概要
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病院における老年看護の実態を把握し,老年看護専門看護師教育を検討する目的で自記式質問紙を用い調査を実施した.調査対象は,3つの総合病院の65歳以上の患者30%以上を占める病棟の看護婦279名.有効回答245名.分析は,看護経験年別,経験3年以下群,経験3〜10年群,経験10年以上群の3群に分類し検討し,以下のことが明らかになった.(1)日常生活援助で,「一定時間ごとの排泄」「義歯の手入れ」に対し「よく行う」の回答は,経験10年以上群が最も高率,各経験年群間に有意差を認めた.(2)「褥瘡の予防法」では,「皮膚の清潔・乾燥」に,経験10年以上群は最も高率を示す回答,各経験年群間に有意差を認めた.(3)「老人の接し方で注意すること」では,「個人の価値観・人生観を大切に」の回答は,経験10年以上群が最も高率,経験3〜10年群は低率を示し,両群間に有意差を認めた.(4)「老人の精神安定になること」では,「家族の面会」の回答は,経験10年以上群が最も高率3〜10年群との間に有意差を認めた.(5)「福祉情報提供状況」では,情報を「時々提供している」の回答は,経験10年以上群が最も高率,一方「あまり提供していない」と「まったく提供していない」を合わせ,経験3年以下群が高率,各経験年別群間に有意差を認めた.(6)「老人ケアで困ること」では, 「家族の受け入れが悪い」の回答は,経験10年以上群は最も高率,他経験年群間と有意差を認めた.(7)「老人のケアで嫌なこと」では,嫌なことは「ない」の回答が経験10年以上群は最も高率,3年以下群は低値であったが有意差はなかった.10年以上の経験は専門職としての役割,使命感がつちかわれ「嫌なこと」と捉えていないのであろう.(8)「老年看護で深めたいこと」では,経験10年以上群は「老人のQOL」と「ADL援助」の2項目のみであったが,経験の少ない群は,学びたい項目が多かった.各経験年群間に有意差を認めた.以上,10年以上の経験者は老年看護の実践面で,熟練者に相応しい対応,専門職者の責任感,考え方などが,経験少ない者と相違を示した.老年看護専門看護師には,スタッフの教育,管理,医療福祉,人間理解など多面的な教育が必要である.
- 日本老年看護学会の論文
- 1996-11-15
著者
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沼本 教子
日本老年看護学会研究活動推進委員会
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小野 幸子
日本老年看護学会研究活動推進委員会
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小野 幸子
岐阜県立看護大学
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野口 美和子
千葉大学看護学部
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小野 幸子
千葉大学看護学部
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山幡 信子
藤田保健衛生大学衛生学部衛生看護学科
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沼本 教子
聖隷クリストファー看護大学
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野口 美和子
千葉大学看護学部成人看護学第一講座
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