水稲機械移植用育苗における遮光性フィルムの利用に関する研究 : 第3報 三層構造シルバーポリフィルムの特性把握とその適用性
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概要
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稚苗育苗において,三層構造シルバーポリ4種(^#60,^#80,^#90,^#100)を用い,密閉トンネル方式による利用法確立を目途とした試験を1976年から8年間実施し,主として温度と水分変化および苗生育への影響について検討した。得られた結果の大要はつぎのとおりである。1)^#80,^#90,^#100の3フィルムは遮光度がほぼ呼称値並みであり,これら3者では密閉トンネル内の最高気温が40℃前後になるものの高温障害はみられず,換気操作が不要となることから箱内水分の消失は60〜100ml/日と極度に少なく,このため密閉状態では6〜7日間(晩期育苗では4〜5日間)灌水が不要となり,苗緑化の安定化および育苗管理の省力化上きわめて注目された。2)また,上記3フィルム間ではトンネル内の気温推移に大きな差がないので,温度よりも遮光性に基づく苗徒長をまねかない配慮が重要とみられた。3)一方,^#60フィルムは遮光率が45%程度しかなく,晴天日にはトンネル内気温50℃にも達し,葉先枯れをまねくので不適視される。なお,シルバーポリは強い日射を受けるとフィルム自体が55℃もの高温となるため,出芽後での箱表面被覆(通称ベタ張り)は危険視される。4)出芽安定性(籾の浮き上がりなど)の点では積み重ね出芽後の被覆利用が好ましく,播種後利用の場合は,(1)播種時灌水の増量(積み重ね出芽方式より5割程度増量),(2)苗箱設置床へも十分灌水する,(3)出芽状況の点検(状況により灌水する),の3点を励行することが肝要といえよう。5)以上のことから,適用シルバーポリとしては^#80または^#90フィルムが妥当とみられ,密閉被覆の適日数は,普通期育苗の場合,播種後利用方式で6〜7日,出芽後利用方式で8〜4日,また晩期育苗でのそれは前者で4〜5日,後者で2〜3日とみなされた。なお,比較対照材として用いた発泡ポリもこれに準ずる考え方で適用できると判断された。本研究遂行にあたり,資材の提供など多大の便宜と協力をいただいた農業生産工学研究会の方々および東〓興業KK関係者に対し,心から感謝の意を表する次第である。
- 1980-01-15
著者
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