トールフェスクの葉身横断面におけるミネラルの分布

概要

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グラステタニー症等家畜の代謝障害には,牧草中のミネラル含有率が深く関連することが知られている。家畜による牧草中のミネラルの利用率はミネラルの種類及び草種によって異なるが,その理由の1つとして,それぞれのミネラルが存在する植物組織の消化性が関係すると考えられる。本研究は,トールフェスク葉身横断面のミネラル成分の分布をエネルギー分散型X線分析によって調べることを目的とした。出穂後約2週間経過したトールフェスク「ホクリョウ」の止葉を1992年6月30日に採取した。葉身先端部,中央部,及び基部から約0.2mmの厚さで観察用横断切片を作成し,それぞれの部位で葉端付近,中肋付近及びこれらの中間付近の3測定単位の合計9箇所で分析を行った。維管束を中心とした両隣の維管束との中間部までを1測定単位とし,各測定単位ごとに表皮,繊維,維管束鞘,木部,篩部,葉肉の小測定単位で,K,Ca,Mg,Si,Cl,S,Pの7成分の分析を行った。葉身横断面の面分析にはJSM-5300LVを,また,葉身内部各組織のミネラル含有率の相対比較にはEMAX-2770を使用し,試料をカーボン蒸着した後X線分析にかけた。図2の左上は1測定単位のSEM像,図1は図2の1測定単位に該当する部位のスペクトルである。各測定単位ともSiとKが最も多く検出され,Cl,Ca,S,Pが続き,Mgは最も少なかった。図2のその他の写真は,同一部位の各ミネラル成分と分布を面分析の結果で示している。また,表1には小測定単位ごとの各ミネラルの割合を示した。Siは表皮組織に最も多く分布していた。その他のミネラル成分はSiほど顕著な分布を示さなかったが,Caは発達した2次細胞壁に偏在し,K及びClは木部及び篩部等の維管束組織に多く分布する傾向がみられた。Caが発達した2次細胞壁に多く分布していたことは,家畜によるCaの利用率が低いことの1因と考えられるが,他のミネラルでは分布状態と利用率とに明瞭な関係は見いだせなかった。
1993-06-25

トールフェスクの葉身横断面におけるミネラルの分布

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