芝草病害の季節別病害診断ためのPCRプライマー・キットの開発
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概要
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本研究では効率的な芝草病害の診断をおこなうため、関東地区に発生が見られる芝草病害を季節的に分類し、分子マーカーを用いたPCRによる季節別簡易診断法の開発を行った。西洋芝における重要病害を季節的に分類したところ、4・5・10・11月(発生グループ1)にはピシウム病、ダラースポット病、炭疽病、立枯病がよく発生し、6・9月(発生グループ2)にはピシウム病、葉腐病、炭疽病、立枯病、7・8月(発生グループ3)には赤焼病、葉腐病、炭疽病の発生が顕著であることから、病害を季節ごとに3つの発生グループに分けることができた。そこで、発生グループごとの病原菌をPCRで識別する簡易的かつ迅速な病害診断法の確立を目指した。特異的プライマーは、rDNA internal transcribed spacer (ITS)領域のシークエンスデータに基づき構築した。また、病原菌を特定できるようPCR産物の増幅断片長に約100bpの相違をもたせて設計した。構築した立枯病菌、炭疽病菌、ピシウム病菌、ダラースポット病菌の各病原菌特異的プライマーを用いてPCRを行ったところ、それぞれ目的の病原菌ゲノムDNAからの増幅が認められ、さらに罹病葉からのアルカリ簡易DNA抽出法によるPCRにおいても同じ長さのDNA断片長の増幅が見られ、病原菌特異性が示された。発生グループごとの病害を識別するため、各病原菌に対する特異的プライマーを組合せて季節別プライマー・キットを調製した。このプライマー・キットを用いてPCRを行ったところ、目的の病原菌のみからDNA増幅が認められ、その増幅断片長を測定することで病原菌を特定することに成功した。さらに、ゴルフ場に発生した2種病害について診断したところ、増幅断片長から病害を炭疽病およびダラースポット病であると診断することに成功した。なお、この診断結果は病原菌を分離・同定したそれぞれの結果と一致した。このことから、本診断法は簡便かつ迅速な診断法であるとともに、罹病葉における微量な病原菌の存在を短時間で確認できることから早期の病害診断に大いに役立つものと考えられる。
- 明治大学の論文
- 2006-01-31
著者
-
米山 勝美
明治大農
-
米山 勝美
明治大学農学部
-
山下 義幸
明大応昆
-
山家 愛祈
明治大学農学部農学科植物病理学研究室
-
三堀 友子
明治大学農学部農学科植物病理学研究室
-
土田 智美
明治大学農学部農学科植物病理学研究室
-
新宮 良宣
明治大学農学部農学科植物病理学研究室
-
工藤 馨
明治大農
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