牧草の主要病虫害の防除法確立に関する研究 : 牧草の病害防除に関する基礎的研究(1)

概要

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1.本学富士吉田農場における牧草畑を対象として,1960年〜1963年の4ヵ年にわたり,毎年4月〜11月の間に発生する牧草類主要病害の年次的,季節的発生消長を調べた。その結果同農場としては,オーチャードグラスではスジハガレ病,ライグラス類では冠サビ病,またクローバー類ではオハン病,リンモン病などが,とくに注意すべき病害であると思われた。2.1963年に本学誉田農場において,オーチャードグラスおよびイタリアンライグラスにネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)が寄生することを確認した。3.オーチャードグラスにネコブセンチュウが寄生した場合,クロローシスの発現など外観上の変化は認められなかったが,草丈の伸長,茎数の増加などがおとり,結果的には生草重および風乾重の減少というかたちで減収することが明らかにされた。4.ネコブセンチュウの耕種的防除法の一つとして,非寄主植物との組合わせによる輪作体系を確立するための基礎的資料を得るため,本学誉田農場および富士吉田農場に分布するネコブセンチュウの種類とその寄生植物Host plantを調べた。その結果,誉田農場においてはMeloidogyne incognitaの分布割合が高く,その寄生作物は同農場に栽培されている大部分の作物および畑地内外の雑草におよんでいることが明らかにされた。また富士吉田農場においてはMeloidogyne haplaが多く分布し,その寄生植物はかなり広範囲におよんだが,同農場に栽培されている牧草類および普通作物の中には,現在までのところでは,ネコブセンチュウの寄生が確認されないものもかなりあった。5.牧草の「夏枯れ」の基本的な問題にたちかえって,地温ならびに気温と牧草の生育との関係について調べた。その結果草種間に差がみられ,地温が30℃の場合にはオーチャードグラスでは地上部,地下部ともに生育がおとったが,ペレニアルライグラスでは地下部の生育はおとったが,地上部の生育はかなり旺盛であった。地上部と地下部をあわせて生育量とみるならば,オーチャードグラス,ペレニアルライグラスともに地温20℃,気温20℃という条件がもっとも旺盛な生育を示すようであった。6.ホワイトクローバーの「夏枯れ」にネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)が関与するかどうかについて調べた結果,ネコブセンチュウがきわめて密接な関係をもっていることが明らかとなった。したがって,ネコブセンチュウの生息密度の高い畑地においては,あらかじめ殺線虫剤を施用して線虫の駆除を行なえば,ホワイトクローバーの「夏枯れ」はほぼ完全に防止し得るよう思われた。
明治大学の論文

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