芝草病害の分子診断法におけるDNAマーカーの構築

概要

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芝草病害の診断をより効率的に行うために、病原菌ゲノムDNAのrDNAにおけるinternal transcribed spacer(ITS)領域等の多型に基づくDNAマーカーを用いた分子レベルにおける簡易同定法の開発を行った。芝草病害としては葉腐病(ラージパッチおよびブラウンパッチ)、葉枯病、ダラースポット病、赤焼病、擬似葉腐病、炭疽病の発生が大きな問題となっている。そこで、まず葉腐病、葉枯病、ダラースポット病、赤焼病の診断を目的として、各病原菌に特異的なプライマーの構築を試みた。各病原菌のrDNAにおけるITS領域の違いに着目して、葉腐病菌R. solani AG2-2菌およびR. solani AG-1に対する特異的プライマーとしてそれぞれRSY1-RSY2とR1S1-R1S2、カーブラリア葉枯病菌におけるCurvularia sp.難胞子形成株の特異的プライマーCD1-CD2、ダラースポット病菌S. homoeocarpaの特異的プライマーDr1-Dr2、赤焼病菌P. aphanidermatumの特異的プライマーPas1-Pas2を構築した。これらのプライマーを用いてそれぞれの病原菌ゲノムDNAを鋳型としてPCRを行ったところ、目的の病原菌のみでDNA増幅が起こり、病原菌特異性が確認された。さらに、少量の罹病葉からDNAを抽出するアルカリ簡易DNA抽出法を開発し、上記のプライマーを用いて病原菌の検出を試みたところ、接種罹病葉から病原菌を特定することに成功した。また、この簡易診断法を用いて自然発生した2病害について診断したところ、葉腐病(ラージパッチ)およびダラースポット病を診断することに成功した。この診断結果は病原菌の分離・同定した結果と完全に一致し、PCR診断が正確であることが実証された。この簡易診断法はサンプルの精製が容易で、短時間かつ費用も安価であるなどの利点がある。また、罹病葉における微量な病原菌の存在も確認できるため発生初期の病害診断に有効で、新たな病害診断技術として実用化できる可能性がある。
明治大学の論文
2006-01-31

芝草病害の分子診断法におけるDNAマーカーの構築

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