南九州の黒ボク土に多量施用された生牛糞の肥効と残効 : 土壌の理化学性の変化(その1)
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概要
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鹿農試大隅支場の黒ボク・黒ニガ混合土圃場で, 1972年から5年間行われた飼料作物に対する生牛糞連続単用試験地土壌の中, 0t, 48t, 100t区の3作, 7作, 10作跡地土壌の理化学性の変化を調べた.次に, 前記の5年間(0,48,100t/10a/年)生牛糞を連用した土壌を用い, 1978年から3年間, 夏作陸稲, 冬作小麦の無肥料栽培(1/5000aポット)試験を行い, 1,2,3,5作跡地の化学性の変化を調べた.以下に100t区について得られた結果を要約する(毎年100tを5年10作連用した跡地土壌を100t10作と記し, その後, 無肥料ポット栽培5作跡地土壌を100t無肥料5作と記す).1.100t10作後で土壌有機物は7%しか増加せず, 施用牛糞の全炭素の98%が消失する.また, 100t無肥料5作後でも有機物は5%しか減少しない.2.100t10作後に土壌の全窒素は47%増加する.施用牛糞中の窒素の約7.5%が土壌に残留し, 植物に吸収された分を差引くと約75%の窒素が消失する.100t無肥料5作後には全窒素は約11%が消失する.3.土壌の炭素率は100t10作で23.5から17.0と低下し, 100t無肥料5作後に18.0と大になる.微細植物根がほぼ完全に除去された土壌試料では, 100t10作で20.3から15.9へ100t無肥料5作後に17.0と変化した.供試土の炭素の約47%, 窒素の約55%が有機物未分解の<0.002mm(粘土画分)中に存在し, その炭素率は100t, 10作で17.4から13.8まで低下し, 100t無肥料5作後でも13.9であり, 窒素の残効期間はかなり長いと推察しうる.4.100t10作後にCECはわずかに増大し, 置換性各塩基含量は明らかに多くなり, 塩基飽和度は9%から55%に増大する.100t無肥料5作後でも塩基飽和度は55%から47%へとわずかしか低下しない.各塩基含量の低下様相は著しく異なる.Caは5作無肥料によりほとんど低下しない.Mgは各作毎に漸減する.Kは100t10作で0.22me/100gが2.59me/100gに増加するが, 無肥料2作後には0.18,5作後には0.04meと急減する.5.有効性燐酸は100t10作で1.3→43.4と増加し, 100t5作後でも10.9とかなり高い値を示す.燐酸の残効もかなり長いことを示唆している.6.燐酸吸収係数, 等電点は100t10作後には(2525,3.40)から(1592,2.76)に低下し, 100t無肥料5作後では(2182,3.02)と変化した.7.仮比重は100t10作で0.695から, 0.605と変化し, 固相率も低下し, 透水係数も小になった.8.無肥料ポット(1/5000a)試験では, 毎年100t5作連用した生牛糞の残効は3作で終った.しかし, 土壌肥沃度の観点からみると, ポット試験における残効期間が短いことは, 主として有効態加里の欠乏に起因すると考えられる.したがって, 現地の圃場試験では, 潜在的窒素地力, 有効燐酸, 置換性Ca, 低下した等電点と燐酸吸収係数の残効はかなり長期間続くと考え得る.
- 鹿児島大学の論文
- 1985-03-15
著者
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